ファクタリングの手数料は交渉できる?
ファクタリング会社から提示された手数料を鵜呑みにして支払う必要はありません。交渉次第で手数料を下げることもできます。しかし、何の予備知識もなく交渉しても、ファクタリング会社に聞き入れてもらえる可能性は低いでしょう。
手数料を交渉する上で大切なのが、相場や手数料に影響する要素をあらかじめ理解しておくことです。ただ「どうにか手数料を安く抑えられないか」と相談するよりは、「相場の○○%くらいまでに下げることはできないか」「3社間ファクタリングにして手数料を〇%以下にしたい」など、手数料を下げるための材料を依頼主から提示した方が相談に応じてくれやすくなります。
また、ファクタリングの知識をある程度持っていることがファクタリング会社に分かってもらえれば、手数料を下げるための具体的なアドバイスをファクタリング会社の担当者から提案してもらえる可能性もあります。
仮に手数料を下げてもらうことができなくとも、手数料が妥当か自分で判断できれば納得して支払えるはずです。そのためにも、手数料がどのような要素によって上下するのかを理解しておきましょう。
ファクタリング手数料に影響する要素とは
ファクタリング手数料に影響する要素としてどのようなものがあるか見ていきましょう。また、なぜそれらの要素によって影響されるのか、理由もしっかり理解しておくと交渉の場面でも役立ちます。
売掛先の信用情報
まず第一に挙げられる要素としては、売掛先の信用情報があります。ファクタリングの審査でも、売掛金保有会社の信用情報よりも売掛先の信用情報が重要視されます。ファクタリングは売掛債権を買い取ってもらうことで資金を調達します。そのため、ファクタリング会社にとっては無事売掛金を回収できるかどうかが重要になってくるのです。
売掛先が今にも破産寸前の会社ならば、ファクタリング会社は最悪売掛金を1円も回収できずに大損する可能性もあります。売掛先の信用情報に多少の問題がある場合は、売掛金を回収できなかった時の赤字分を少しでも減らすために、あらかじめ手数料にリスク分を上乗せして回収しておこうと考えます。このような理由から、売掛先の信用情報によって手数料が増減するのです。
裏を返せば、信用できる売掛先の売掛債権ならば、低い手数料で買い取ってもらえることを意味しています。金額が同じくらいの売掛債権が複数ある場合は、最も信用情報に問題のなさそうな売掛先の売掛債権でファクタリングの契約を結べば、手数料を安く抑えることができるでしょう。
2社間ファクタリング・3社間ファクタリングの違い
また、ファクタリングが2社間のものか、3社間のものかでも手数料が大きく変わってきます。先述した通り、2社間ファクタリングの手数料相場が10~30%なのに対し、3社間ファクタリングの手数料相場は1~10%と非常に安く抑えられています。これは、ファクタリングの仕組み上、2社間ファクタリングの方がファクタリング会社にとってリスクが高いことが影響しているからです。
3社間ファクタリングは、売掛金保有会社であるファクタリングの依頼主とファクタリング会社の間で売掛債権を売買すると、ファクタリング会社は売掛先から売掛金の回収を行います。そのため、売掛先の承諾なくして3社間ファクタリングは成り立ちません。一方2社間ファクタリングは、依頼主とファクタリング会社の間で売掛債権を売買し、売掛先からファクタリングの依頼主である企業へ売掛金が入金され次第、ファクタリングの依頼主である企業からファクタリング会社へ売掛金を支払うことになります。この場合は、売掛先の承諾がなくてもファクタリングの契約を結ぶことができます。
ファクタリングの説明図を追加してください。
3社間ファクタリングはファクタリング会社が直接売掛先に売掛金の回収を行うので、売掛先がきちんと売掛金を支払うかどうかだけ心配しておけば問題ありません。しかし2社間ファクタリングの場合は、売掛先が最初の売掛金保有会社であるファクタリングの依頼主に入金するか、そして、その依頼主もファクタリング会社へきちんと売掛金を支払うか、二重のリスクを背負うことになります。
売掛先が予定通り売掛金を支払ったとしても、依頼主が倒産などで支払い不可能になってしまえば、ファクタリング会社は売掛金を回収できずに損をすることになるのです。そのため、回収しやすい3社間ファクタリングの方が、手数料が安い傾向にあります。
償還請求権の有無
償還請求権の有無によってもファクタリング会社のリスクが変わるため、手数料に影響を与える要因となります。ファクタリングにおける償還請求権とは、売掛先が倒産などの理由で売掛金を支払えなくなった場合に、ファクタリング会社がファクタリングの契約者に売掛金の支払いを請求する権利のことをいいます。
この償還請求権によって、売掛先の倒産による赤字が回避できるので、リスク分を手数料に上乗せする必要がなくなります。そのため、償還請求権ありの方が手数料を安く抑えることができるのです。3社間ファクタリングでは、償還請求権ありの場合が多いです。
売掛債権の金額
リスクとは関係ありませんが、売掛債権の額面によっても手数料が多少変動します。ファクタリングを行うには、事務手数料や登記費用などの諸費用や処理の手間が発生します。これらは額面にほぼ関係なく、1つの売掛債権ごとに同じだけ発生するものです。
そのため、同じ300万円分のファクタリングを行うにしても、1社あたり300万円分の売掛債権を買い取るのと、1社あたり100万円の売掛債権を3つ買い取るのとでは、事務的なコストや手間が3倍違うことになります。したがって、売掛債権の額面が大きいほどファクタリング会社が手に入れる利益に対してのコストが低くなります。その浮いた諸費用分を手数料から差し引くことによって、手数料を安く抑えることができるのです。
先述したように売掛先の信用情報によっても手数料が変わるため、売掛債権の額面が大きければ良いとは一概にはいえないものの、信用情報に問題がなさそうであれば額面の大きな売掛債権でファクタリングを行うのも一つの手です。
契約するファクタリング会社における取引履歴
また、契約するファクタリング会社との取引履歴によっても手数料が変わることがあります。同じファクタリング会社と何度も取引を行い、問題なく売掛金を入金した実績があれば、そのファクタリング会社から信用できる会社だと判断されやすくなります。
何度も書いている通り、売掛金が無事に回収できるかどうかのリスク分が手数料に上乗せされています。そのため、継続的に問題のない取引を続けるほど手数料の交渉がしやすくなるのです。ただ、逆にいえば初回の契約はどうしても手数料が高くなってしまうでしょう。
しかし、初回契約時に、次回以降は手数料の割引があるかどうかを聞いておくことで、今後もそのファクタリング会社と積極的に取引していきたいという姿勢を印象付けることができます。そうすることで、手数料の交渉を優位に進めることが期待できます。
ファクタリング手数料に含まれている諸費用
ファクタリングの手数料は、前項のような要素だけで成り立っている訳ではありません。売掛債権を売買するための諸費用も含まれていることを頭に入れておきましょう。
諸費用としてまず挙げられるのが、取引を行うための着手金です。しかし、必ずしも全てのファクタリング会社で着手金が請求されるわけではありません。また、取引に必要な書類を用意するための事務手数料や、申込者および売掛先の信用情報を調べるための調査費用なども発生します。さらに、5万円以上のファクタリング契約では収入印紙を契約書に貼り付けなければならないため、売掛債権の金額に応じた収入印紙代も費用として請求されます。遠方にあるファクタリング会社と契約する場合には、担当者に出向いて対応してもらう際の出張代なども別途請求されるでしょう。
これらの他に、債権譲渡登記に関する費用も発生します。登記とは債権などの権利が誰にあるのかを公的に登録することをいい、債権譲渡登記は売掛債権がファクタリング会社に譲渡されたことを証明するための大切な手続きになります。
もし2社間ファクタリングで債権譲渡登記がされなければ、ファクタリング会社が売掛債権を買い取ったことを証明することが難しくなり、最悪の場合、契約者に売掛金を踏み倒されてしまう恐れがあります。また、債権譲渡登記を行わなければ売掛債権の所有者が契約者のままなので、他のファクタリング会社と二重にファクタリングを行われる危険性もあるのです。
そのため、2社間ファクタリングの場合は債権譲渡登記が必須となります。ただし、3社間ファクタリングの場合は売掛先の同意があるため、債権譲渡登記をしなくても悪用される心配がなく、債権譲渡登記の必要がありません。
債権譲渡登記には、登記の手続きを行ってもらう司法書士への手数料、登録免許税などの収入印紙代などが手数料として発生します。司法書士への手数料は、ファクタリング会社が依頼する司法書士によって異なるため、ファクタリング会社によって差が出やすい項目です。