自ら会社を経営している人や経理に携わっている人であれば誰しも、資金調達の重要性は認識していることと思います。 しかし、時には思いがけないようなことが起こり、資金調達計画が狂ってしまうことがあります。原因となり得るのが、取引先の破産です。そこで、破産した取引先に対して売掛債権を持っていた場合には、できるだけ債権を回収して自社を守ることが必要となります。債権会社(売掛金保有会社)がとるべき対策についてお伝えします。
取引先が倒産しても売掛金は回収できる?
結論からいうと、取引先(売掛先)が売掛金を支払わないまま破産してしまった場合、自社が保有している売掛金の金額の全額を回収することは非常に困難です。しかし、回収する方法が全くないわけではありません。
しかし、特に中小企業の場合には、売掛先が破産することによって自社の資金繰りまでも立ち行かなくなり、連鎖倒産を起こしてしまうリスクがあります。従って、そのリスクを念頭に入れ、事前に知識を蓄えておくなどの準備は必要です。そうすることで、いざ売掛先が破産した場合であっても迅速に対応を行い、自社の損害を小さくできる可能性が上がります。
取引先が破産! まずは状況を確認しよう
取引先(売掛先)が破産してしまったら、まずは状況を確認することが最も大切です。一口に破産や倒産といっても、実際の会社の状態はさまざまです。意味するところを正確に把握するようにしましょう。
例えば「破産」は、総資産を使っても負債の返済ができない状態を指します。破産法上では、資産を現金に換えて負債の返済に充てる手続きに入るということを意味します。そして「倒産」は、企業が債務を返済できなくなり事業継続が困難になっている状態を指します。手形を使用しているのであれば、半年以内に2回の手形不渡りを出して、銀行取引停止処分を受けた時に使われます。
参考: e-Gov法令検索|破産法
どちらも負債の返済が困難であることは同じですが「倒産」の方が意味合いは広く、「破産」も含めた経営破綻状態での、さまざまな手続き全般を指すと捉えると良いでしょう。
ちなみに、不渡り手形を出した状態は、本来であれば「倒産」ですが、「破産」といわれることもあります。
「倒産」した場合、手続きには大きく分けて「法的手続き」と「私的手続き」の2つがあります。
「私的手続き」は、裁判所が関与することなく、債務者と債権者の話し合いで債権・債務を整理することです。柔軟に、しかも秘密裏に、対応策を決めて解決することができるというメリットがありますが、決定に強制力がないために約束が守られない可能性や、話し合いが決裂してしまうリスクがあります。
「法的手続き」として挙げられるものには、まずは「会社更生法」や「民事再生法」があります。これは、とりあえずの営業はできる状態であっても、経営判断で適用を決めるものです。他にも、「破産手続き」や「特別清算手続き」などがあります。これら「法的手続き」は、裁判所に関与してもらうため決定に強制力がありますが、債権者からすると手続きに時間がかかる、希望を裁判所に認められずに債権を回収できないなどの可能性があります。
取引先が破産した場合に債権会社がとるべき対策
取引先(売掛先)が破産した場合に、債権会社(売掛金保有会社)が債権を回収するための方法について紹介します。
買掛金と相殺する
売掛金保有会社が売掛先に対して買掛債務を負っているのであれば、売掛債権と相殺することで債権を回収したことになります。手続きとしては、売掛先に相殺の意思表示をすれば良いのですが、相殺が禁止されるケースもあります。相殺による売掛金の回収が可能かどうか、弁護士などに相談して確認しておくと安心です。
債権譲渡により回収する
売掛先が他社に対する売掛債権を保有している場合には、その債権の譲渡を受け、それを行使することで自社債権を回収できます。
担保権を行使する
あらかじめ不動産抵当権などの担保権を設定しておけば、売掛先が破産しても権利を行使して弁済を受けられます。しかし、行使の際には売掛先の了承が必要です。
代物弁済により回収する
代物弁済とは、本来の債務の返済の代わりに、特定の資産を債務者が債権者に譲渡することで、返済したことにする手続きです。当然のことながら代物弁済を行うためには、債務者である売掛先と債権者である売掛金保有会社間での契約が必要です。
これらの方法をとることができれば、売掛金保有会社は売掛債権をある程度は回収することができます。しかしながら、例えば破産手続きなど法的手続きに入ってしまった場合には、裁判所によって破産管財人が選任され、その管財人のもとで債務整理が行われるため、売掛金保有会社のこれらの要望が否認される可能性もあります。
取引先が法的倒産手続きに入った場合は必ず債権届を!
取引先(売掛先)が倒産して法的手続きに入った場合には、裁判所から「債権届出書」が債権者に対して送られます。これは、債務者に対して有している債権の内容を、債権者が届け出る書類です。届出書を提出することによって、その後の法的手続きの中で債務者にある程度の財産が集まった時には、債権者はその財産の中から債権額に応じた配当を受けることができます。
参考:裁判所|債権届出について
多くのケースでは配当できるほどの財産が集まることは少なく、また、債権届出書を出すか出さないかは債権者の自由意思に委ねられています。しかし、少しでも債権回収の可能性を上げるためには、提出しておくに越したことはありません。
売掛先が倒産した場合、売掛金保有会社が債権を回収することは困難です。しかし、適切な対策をとることである程度の回収は可能です。いざという時にはこの記事の内容を参考に対処してください。
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この記事の執筆者:資金調達ニュース編集部
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保有資格:宅地建物取引士・日商簿記検定2級・ファイナンシャル・プランナー2級