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補助金の課税を繰り延べる「圧縮記帳」とは?
会社で補助金を受給した際に、そのまま何もせず会計処理すると補助金分に対して法人税が課せられてしまいます。これを翌期以降に繰り延べることができるのが「圧縮記帳」です。その概要をご紹介します。
補助金によって増えた資産のための「圧縮記帳」とは
補助金によって増えた資産は雑収入とみなされます。
そのため、受給した補助金には税金がかかることになります。
せっかく補助金が受けられたとしてもその分の税金は支払わなければならず、結果的に受給した金額が減ってしまうことになります。
例えば補助金をもらって設備を買って事業を開始し、仮にその期の売上がまだ0円だったとします。
売上が0円なら税金はかからないはずですが、実際には補助金で得た収入があるためにその分の税金を取られることになります。
これでは何のための補助金なのか分かりません。
そこで補助金を受け取ったときに一度に税金を支払うのではなく、支払のタイミングを次年度以降に繰り延べる(先送りできる)のが、法人税法に則った圧縮記帳という会計手法です。
圧縮記帳は、補助金を利用して施設などの事業に必要な固定資産を購入した場合などに適用できます。圧縮記帳が認められる例としては以下のものがあります。
- 国庫補助金などで固定資産などを取得した場合
- 工事負担金で固定資産などを取得した場合
- 非出資組合が賦課金で固定資産などを取得した場合
- 保険金などで固定資産などを取得した場合
- 交換により資産を取得した場合
ただし、圧縮記帳はあくまでも「税金を一度に支払わなくてもすむ」という手法です。
圧縮記帳を適用すれば税金を何年かに分散して支払うことができます。
そのため一時的に税金は軽減されますが、最終的に同じ額の税金を支払うことには変わりありません。
税金が免除されたり得をしたりするわけではないので注意してください。
補助金にかかる税金
補助金や助成金は会計上、収入として扱います。
この場合、対価としての収入ではないので消費税はかかりませんが、法人税がかかります。
施設補助金などを利用して固定資産を購入した場合、損金にできるのは減価償却分のみです。
それを上回る分の補助金による所得が課税対象になります。
圧縮記帳の2つの方式
圧縮記帳には、直接減額方式と積立金方式の2つの方式があります。
直接減額方式
損金経理によって帳簿価額を直接減額する方法です。
直接減額方式では固定資産の取得原価を直接減額し、これを「固定資産圧縮損」として費用計上します。
圧縮損を計上することで補助金による収入と圧縮損とを相殺し、補助金による収入に対する課税を回避できます。
なお、圧縮記帳を行った資産の減価償却は、圧縮記帳後の取得原価をもとに行います。
このことにより、圧縮記帳による課税を、翌期以降の減価償却期間へ繰り延べることになります。
積立金方式
決算確定の日までに剰余金を処分することにより、圧縮積立金を積み立てる方法です。
積立金方式では圧縮積立金は損金経理されないため、法人税の確定申告時に調整することになります。
また、減価償却費は税務上の取得価額と帳簿上の取得価額で計算し、税務上の取得価額で計算した減価償却費を超える分だけ積立金を取り崩して、益金の額に算入します。
圧縮記帳の会計処理
最後に、圧縮記帳を行わなかった場合と、直接減額方式、積立金方式の双方で会計処理をした場合の例を見てみましょう。
【設例】
- 国庫補助金の交付額 3,000,000円
- 取得した固定資産の取得価額 5,000,000円
- 耐用年数10年、残価価額0、定額法(償却率:0.100)
- 税率 40%
- 毎年の経常利益 10,000,000円
圧縮記帳を適用しなかった場合
(1)国庫補助金の交付を受けたとき
(借方)現金預金 3,000,000 / (貸方)国庫補助金受贈益 3,000,000
(2)固定資産を取得した場合
(借方)固定資産 5,000,000 / (貸方)現金預金 5,000,000
(3)減価償却費の計上
(借方)減価償却費 500,000 / (貸方)固定資産 500,000
◎税額は…
【1年目】
(10,000,000+3,000,000-500,000)×40%=5,000,000円
【2年目以降】
(10,000,000-500,000)×40%=3,800,000円
10年間の税額:5,000,000+3,800,000×9年=39,200,000円
直接減額方式による圧縮記帳
(1)国庫補助金の交付を受けたとき
(借方)現金預金 3,000,000 / (貸方)国庫補助金受贈益 3,000,000
(2)固定資産を取得した場合
(借方)固定資産 5,000,000 / (貸方)現金預金 5,000,000
(3)圧縮記帳の処理
(借方)固定資産圧縮損 3,000,000 / (貸方)固定資産 3,000,000
(4)減価償却費の計上
(借方)減価償却費 200,000 / (貸方)固定資産 200,000
◎税額は…
【1年目】
(10,000,000+3,000,000-3,000,000-200,000)×40%=3,920,000円
【2年目以降】
(10,000,000-200,000)×40%=3,920,000円
10年間の税額:3,920,000×10年=39,200,000円
積立金方式による圧縮記帳
(1)国庫補助金の交付を受けたとき
(借方)現金預金 3,000,000 / (貸方)国庫補助金受贈益 3,000,000
(2)固定資産を取得した場合
(借方)固定資産 5,000,000 / (貸方)現金預金 5,000,000
(3)圧縮記帳の処理
(借方)繰越利益剰余金 3,000,000 / (貸方)圧縮積立金 3,000,000
(4)1年目の圧縮積立金の取り崩し
(借方)圧縮積立金 300,000 / (貸方)圧縮積立金取崩額 300,000
(5)減価償却費の計上
(借方)減価償却費 500,000 / (貸方)固定資産 500,000
◎税額は…
【1年目】
(10,000,000+3,000,000-3,000,000+300,000-500,000)×40%=3,920,000円
※圧縮積立金3,000,000円の別表減算を行うとともに、1年目分の圧縮積立金の取崩額300,000を別表加算する。
【2年目以降】
(10,000,000+300,000-500,000)×40%=3,920,000円
※毎年、圧縮積立金の取崩額300,000円を別表加算する。
10年間の税額:3,920,000×10年=39,200,000円
圧縮記帳は補助金の課税を繰り延べる制度であり節税方法ではありませんが、一時的に負担を減らすことはできます。
状況に応じて有効に活用しましょう。

この記事の執筆者:資金調達ニュース編集部
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