企業がベンチャーキャピタルに提出する事業計画書は、例えば銀行融資を得るために作る事業計画書とは性格が異なります。どこがどのように違うのか、どのようなツボを押さえて作成すれば良いのか、ベンチャーキャピタル向けの事業計画書の作り方について解説します。
ベンチャーキャピタルに提出する事業計画書は何が違うのか
銀行からの融資とベンチャーキャピタルからの資金調達、そのどちらの場合も事業計画書の提出が必須なのは同じです。
しかし、同じ事業計画書でもそこに書くべき内容、アピールすべきポイントは異なります。
ベンチャーキャピタルからの資金調達において重視されるのは次のような点です。
- 市場の成長性
- 事業の成長速度・成長規模
- IPOやM&Aをエグジットに設定しているか
銀行融資の審査においては、安定した市場、堅実な計画に基づいた着実な成長、それらを踏まえた健全な経営などのポイントを押さえていることが評価されます。
これに対し、ベンチャーキャピタルでは市場や事業に成長性があり、しかもそのスピードとスケールが一定レベル以上であることが求められます。
つまり長期的というよりは、短期で大きな成長が見込めるかという点が重要視されます。
そしてその先にIPOかM&Aというエグジット(出口戦略)があり、ベンチャーキャピタルが投資資金を回収できるのか、大きなリターンを得られるのかが問題とされます。
ベンチャーキャピタルに提出する事業計画書にはこれらのことが記載されていなければなりません。
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事業計画書の構成
事業計画書の一般的な構成は次のようなものになるでしょう。
- エグゼクティブサマリー(事業計画書の要約)
- 事業立ち上げの経緯(どのような理由や目的を持って事業を立ち上げたのか)
- マネジメントチームの紹介(代表者・経営メンバーの顔ぶれと経歴)
- 会社概要(沿革)
- 経営・事業理念(その事業で何を目指すのか)
- 業界の展望(領域の特定)
- ビジネスモデル・収益モデル(ビジネスの仕組み、どうやって収益を出すのか)
- 商品・サービスの紹介(具体的に何を売っていくのか)
- 市場・顧客・競合の分析(市場自体の成長性とその中でどのような競合優位性があるか)
- マーケティング・営業(どのように売っていくか)
- 立ち上げ戦術(スタートアップやアーリーステージでの戦術)
- 事業戦略・成長戦略・人事戦略(短期戦略と中長期戦略)
- 資金計画(資金調達金額と資金使途)
- 出口戦略(IPOやM&Aを目標とした計画)
- 財務状況および損益予測(売上計画、黒字化の見込み)
- リスク管理(リスクの洗い出しと対策)
- プロジェクト管理(スケジュール表、タスク管理表などを盛り込む)
何をとくに強調するかは事業の内容や規模によって変わりますが、網羅的にさまざまなデータがしっかりと揃えられていることも重要です。
直接プレゼンすることができ、パワーポイントなどを使って事業計画書を作る場合、ボリュームはスライド50~60枚程度が多いようです。
ただし、情報量が多ければ良いというものではなく、1ページあたりの説明が10秒以内に終わることを目安に、キーワードが確実に相手の印象に残るようコンパクトにまとめると良いでしょう。
事業計画書を書く時の注意点
大前提は嘘を書かないことです。
とくに代表者の経歴などは注意が必要です。
嘘がバレてしまえばそれだけで資金調達の道は閉ざされ、今後の悪評判にもつながってしまいます。
「怪しい」と思われるような説明も排除しましょう。
売上計画などの数字の根拠も徹底的に検証されていることが求められます。
まだ実績がなければ仮説になるのは仕方ありません。
問題は、仮説を組み立てるための数字やデータはリアリティーのあるものにできているかどうかです。
競合他社の売上高などの客観的事実をしっかりと調査して記載しましょう。
また現実を踏まえた事実を提示することが重要とはいえ、単なるデータの羅列に終わってしまうのも避けるべきです。
なぜなら事業計画書の目的はデータを資料のように提示することではなく、自社への投資がどれだけ大きなリターンをもたらすかをメッセージとして示すことだからです。
データはそのための裏付けに過ぎません。
したがって、各項目やページに付ける見出しやキャプションも、訴えたいことが分かりやすい文章、メッセージ性やストーリー性のある書き方にするべきです。
例えば事業立ち上げの経緯やマネジメントチームの紹介にはストーリー性が欠かせません。
会社概要にしても説明が箇条書きで並んでいるだけではなく、どのような会社なのかがひと目で分かるような見出しが付いているだけで訴求力がアップします。
ベンチャーキャピタルにアピールしたいポイント
ベンチャーキャピタル向けの事業計画書で最も大事なことはアピールポイントを明確にし、強調することです。
先述した、市場の成長性、事業の成長速度・成長規模、IPOやM&Aなど出口戦略という3要素を分かりやすく、確実に伝えてください。
それに加えて、代表者の人物像、会社の特徴(ユニークさ、魅力)もアピールできればベターです。
そのためには不特定多数に伝えようとするのではなく、ペルソナを設定してアピールしたい対象を絞り、その人に向けて絶大な説得力を持つような事業計画書を目指すことが有効でしょう。
ベンチャーキャピタルに提出する事業計画書と銀行融資のための事業計画書では、アピールすべきポイントが異なります。
ベンチャーキャピタルで資金調達する場合は、ぜひこの記事を参考にしてください。