現在、株やFX、不動産などの投資を行っているなら、節税についても関心があるのではないでしょうか。2020年度には税制改正大綱により海外不動産投資を利用した節税スキームが封じ込められるなど、節税に関しては一部逆風が吹いている部分もあります。本記事では、個人投資家が法人化することで得られる節税効果や、個人投資家のままで利用できるエンジェル税制など、節税に役立つ情報をまとめてご紹介します。
ここでは下記4つについて徹底解説をしていきます。
・法人化による節税
・エンジェル税制を活用した節税
・株式売却のタイミングによる節税
・ふるさと納税を利用した節税
ぜひ、最後までご覧ください。
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法人化で節税
個人投資家として株式や不動産投資で多額の利益を得ているなら、法人化は有効な節税手段のひとつです。
法人化すると、個人のときとは税金の納め方が変わります。
個人として投資している場合は、投資で得た利益に関しては「所得税+住民税」という形で税金を支払います。
一方、法人化すると、これが「法人税+地方税(住民税+事業税+地方法人特別税)」に変わります。
法人になったほうが税金の種類が増え、しかも税率も高いので損をしてしまうように見えますが、そうとは限りません。
会社を設立して自ら社長になり、自分の収入を会社からの報酬としてもらう形にすると、その金額は会社にとっての経費として扱われます。
その分、会社として納める税金額を減らすことが可能で、しかも自分の給与額は自分で決められます。
もちろん、給与には所得税と住民税が課税されます。
しかし、安定して多額の利益を得ているのであれば、給与額を上手く調整することで、多くのケースで法人化した方が節税になります。
個人投資家として多くの利益を得ていても、累進課税で所得税が上がっていくばかりなのが不満という方は、法人化を選択肢に入れて考えてみましょう。
法人化によるメリット
法人化による節税メリットは、ほかにもいろいろあります。
まず、会社にした場合は個人の場合よりも経費枠を広く取れます。
株式投資なら株に関する書籍代やセミナーの参加費はもちろん、セミナーに行くためにかかった交通費なども経費として処理できます。
法人化によって得られるメリットとしては、ほかにも以下のようなことが挙げられます。
・損益通算が可能
・決算期の変更が可能
・損失が9年間繰り越せる
・株式の上場などに係る受取配当金の20%が益金不算入となる
・減価償却が任意償却にできる
このように、個人の場合よりも多様な節税策を駆使することができます。
法人化によるデメリット
利益が少ない場合は法人化すると税負担が大きくなり、個人事業主のままのほうが得をすることになるという点は、法人化によるデメリットして考えられます。
ある年に投資で大きく儲けたという人でも、その後も安定して同程度の利益を得られる場合でないと、法人化しても意味がないということになりかねません。
また、節税対策が多彩な分、それらに詳しくないと効果的な節税効果が得られないのもデメリットかもしれません。
税理士などの専門家の力を借りるのもひとつの方法ですが、その場合はもちろんコストがかかります。
法人化する場合は合同会社も選択肢に
法人化と言うと一般的には株式会社化することを指すことが多いですが、株式会社以外に合同会社化するという選択肢もあります。
会社設立の際には登記を行う必要がありますが、株式会社の場合は登記費用が約25万円かかるのに対して、合同会社は約10万円で済みます。
また、株式会社では役員の任期(1年~10年)が来るたびに登記を行わなければなりませんが、合同会社では役員に任期がないので、登記の手間を省くことが可能です。
出費と手間を省くことができる合同会社ですが、証券会社の中には株式会社でなければ口座開設ができないというところもあります。
株式投資を行っている方の場合はそこがネックになる可能性もあるので、合同会社を設立するのであれば事前に証券会社に、合同会社での口座開設がOKかを確認しておくのが賢明です。
対外的な印象は株式会社のほうがよいかもしれませんが、投資家が節税目的で設立する会社のことを、対外的に周知することはあまりないでしょう。
エンジェル節税を活用
サラリーマンのかたわら、副業として投資家を行っているような方の場合、法人化にはいろいろな制約が付きまとうことも多いです。
そのようなケースでは、個人投資家のままで「エンジェル税制」という制度を活用して節税する方法もあります。
エンジェル税制の目的と内容
エンジェル税制の目的は、ベンチャー企業への投資を促進させることにあります。
個人投資家がこの制度を利用してベンチャー企業への投資を行うと、投資時点と売却時点の両方で、税制上の優遇措置を受けられます。
優遇措置には2種類あり、個人投資家はそのうちのどちらかを選択適用します。
優遇措置Aは、ベンチャー企業への投資額から自己負担額の2,000円を引いた金額を、その年の総所得金額から控除できるというものです。
そして優遇措置Bは、ベンチャー企業への投資額全額を、その年の株式譲渡益から控除できるというものです。
エンジェル税制の対象となる企業
投資する対象のベンチャー企業の要件は、投資した年の減税措置(優遇措置AまたはB)ごとに異なります。
売却した年の減税措置は、優遇措置AまたはBの要件のどちらかを満たすことで、適用されます。
たとえば、優遇措置Aの対象となる企業は創業(設立)3年未満の中小企業者で、設立経過年数が1年未満かつ最初の事業年度を未経過の場合は「研究者あるいは新事業活動従事者が2人以上勝つ常勤の役員・従業員の10%以上」などと、細かく要件が決められています。
エンジェル税制の申請方法
経済産業省への確認申請で投資対象が対象要件を満たした企業であることが認められると、申請が下りて「確認書」が交付されます。
個人投資家は確定申告で上記の「確認書」を添付して提出し、エンジェル税制の適用を受けます。
株式売却のタイミングによる節税
株式投資を行っている方であれば、株式を売却するタイミングをコントロールすることで節税を行うことも可能です。
含み益がある株の売却タイミングおよび、含み損がある株の売却タイミングについて、以下で説明します。
含み益がある株の売却による節税
含み益がある株を売却することで節税を行えるのは、株式売却による利益と繰越損失を相殺できる場合です。
青色申告を行っていると、損失を翌年以降最大3年間まで繰り越すことができます。
つまり2021年の段階では、2018年に繰り越した損失がまだ残っている可能性があります。
含み益のある株を売却することによって得られた利益をこの損失と相殺することで、所得を圧縮することができるので、節税につながります。
含み損がある株の売却による節税
逆に含み損がある株を売却することで節税を行えるのは、今年の取引で多くの利益が出ている場合です。
利益をそのままにしてしまうと、それに対して高額な所得税が発生してしまいます。
含み損がある株を売却して損失を確定させることで、すでに発生している利益と相殺させて所得を抑えられるので、節税を行うことができます。
株式投資家にとって、株式の売却タイミングは非常に重要な要素ですが、節税を意識するのであればこのような手法もあるということを、覚えておくとよいでしょう。
ふるさと納税で節税
ふるさと納税も、手軽な節税方法として活用できます。
ふるさと納税では、自分の故郷や応援したい自治体に寄付をする手続きをすると、所得税や住民税の還付・控除が受けられます。
また、多くの自治体が地域の名産品などの「お礼の品」を用意しており、寄付をすることでそれらを受け取ることができます。
寄付金の使い道を選択して指定することもできるので、非常に有用な節税手段です。