ここでは下記3つについて徹底解説をしていきます。
・銀行融資のリスケとは何か
・銀行融資のリスケのメリット・デメリット
・銀行にリスケを相談するときのポイント
ぜひ、最後までご覧ください。
銀行融資のリスケとは?
リスケとは、リスケジュールの略です。
銀行融資におけるリスケは、借入(ローン)の返済条件を変更し、返済を一定期間減額してもらうといった「返済猶予」を得るための交渉のことを意味します。
具体的なリスケの例としては、一定期間、元本の返済額を大幅に減らす、もしくは返済を利息のみにするなどの方法があります。
リスケが認められる期間は、半年から最長でも1年間程度です。
それ以上のリスケが必要な場合でも、リスケ期間が経過した後に銀行による再審査があり、その結果、再度リスケが実行されるというのが一般的です。
リスケのメリット
リスケを行うことで享受できるメリットとしては、主に以下のようなことが挙げられます。
資金繰りが楽になる
リスケをしてもらえれば、銀行に対する返済金額を大幅に減らすことができます。
一定期間の間は利息の支払いのみでよい、元本も返済しなければならないもののその金額が大幅にカットされるなど、条件は金融機関との交渉次第ではあります。
ただし、リスケ前よりも圧倒的に資金繰りが楽になることは間違いないので、その間に経営を立て直すことが可能です。
差し押さえや競売などを回避できる
金融機関に無断で返済を延滞してしまえば、担保として預け入れていた不動産などを差し押さえられたり、競売にかけられたりしてしまう可能性があります。
しかしリスケを申し入れて了承してもらえれば、その間は差し押さえや競売のような法的な対処を取られることはありません。
リスケのデメリット
反対にリスケによるデメリットとしては、主に以下のようなことが挙げられます。
タイムリミットが設けられている
リスケでは返済を猶予してもらうことができますが、与えられる時間的猶予は永遠ではなく、必ずタイムリミットが設けられています。
銀行がリスケに応じてくれるのは、あくまでもその期間に経営を立て直して欲しいからです。
リスケのタイムリミットは適宜更新してもらうことも可能ですが、そのためには経営状況が改善されていることが必須です。
タイムリミットの中で銀行に納得してもらうことができなければ、リスケの延長・更新ができなくなり、債権が債権回収会社に売却されてしまいます。
リスケ中は新規の融資を受けにくい
リスケを行っている間は、追加の融資を受けることはできないのが一般的です。
経営状態を改善するために資金が必要になるケースは多々あると思いますが、そのような状況でも融資を受けにくいというのは、会社にとっては非常に厳しいと言えるでしょう。
可能性がまったくのゼロというわけではありませんが、基本的には融資は受けられないという前提で経営再建を目指さなければなりません。
リスケ後の融資は不利になるのか
一度リスケを行うと、その後の新規融資に関しても条件がとても厳しくなる……というのは先ほどお伝えした通りです。
しかし、リスケをして業績が回復し、返済が正常な状態に戻ったのであれば、再び融資が受けられる可能性もあるでしょう。
ただし、融資を受けられても、金利などの条件に影響する可能性については考えておく必要があります。
融資を受けるための条件としては、リスケ後の借入の返済期間(債務償還年数)が10年以内であること、返済を再開してから半年程度経過していること、さらに業績の改善状況が良好と認められることなどが挙げられます。
このうちとくに重要なのは、業績の改善です。
リスケ期間が1年間なら、その間にキャッシュフローをプラスに転じさせ、少なくとも資金繰りに行き詰まる状況に陥ることを回避しなければなりません。
そのために、思い切ったリストラや役員の報酬カットなどの措置が必要になることもあるでしょう。
また、リスケをしていることが取引先などに知られると、信用を失って取引が停止してしまう可能性もあります。
こうしたリスク管理にも、気を配ることが大切です。
関連記事:未然に防ごう! 資金繰りの悪化を招く5大原因とは
銀行にリスケを相談するときのポイント
銀行は基本的にリスケを嫌がります。
しかし一方で、リスケを行うことで借入先の会社が再生できれば、元本の返済を再開させることができます。
利息は債権者である銀行にとって利益となるので、それを確保することが銀行にとっての優先事項となるわけです。
逆に、もしも借入先に再生の見込みなしと銀行側に判断されれば、リスケは行われず、会社経営は破綻に向かうことになるでしょう。
銀行リスケを相談するときにカギを握るのは、経営改善計画書です。
経営改善計画書には、なぜリスケが必要なのかという理由、リスケを行えば再生が十分に可能である根拠、現状の経営状況をどのように改善していくのかという方法が、明確に説明されていなければなりません。
根拠が曖昧なデータは、銀行に疑念を抱かせます。
担当者に「この数字は本当なのか?」と思われれば交渉は上手く運ばなくなります。
うそをついたことが判明すればその瞬間にリスケを拒絶されてしまいますので、ありのままの状況を示しつつ、どう再生するのかをしっかりと示す必要があります。
関連記事:銀行融資を断られたときに実施すべきこと
銀行とのリスケ交渉の進め方
リスケ交渉のタイミングは、返済が難しくなって延滞をしてしまう前でなくてはなりません。
延滞をしてしまうと、リスケできる可能性が低くなってしまうからです。
そこで、資金が不足することが分かったらまずは銀行に対して追加の借入を申し込み、それが断られたらなるべく早めにリスケについて相談するのが、一般的なセオリーです。
ただし、リスケ交渉に入って会社の経営が危ういと判断されると、銀行口座をロックされてしまう可能性があります。
そのため、交渉前にリスケ先の銀行口座の現金をほかに移し、売上の入金口座もリストは関係のない銀行口座に変更しておくことをおすすめします。
また、重要書類となる経営改善計画書は、内容を万全にするため事前に準備しておいたほうがよいでしょう。
銀行によっては、経営改善計画書のほかに試算表、資金繰り表、銀行借入明細書などの書類も必要となります。
その後は銀行の融資担当者にリスケ申請の意向を伝え、書類提出、面談と進みます。
そして融資担当者が稟議を申請し、稟議申請が通ればリスケの契約を結んで実行となります。
新型コロナの特例リスケジュールも
新型コロナの影響で資金繰りが悪化してリスケを検討しなければならないという場合は、中小企業庁による「特例支援」を受けられる可能性もあります。
特例リスケ計画策定支援を受ければ、既存の借入に最大1年間の返済猶予を受けられるほか、コロナ終息後の再生まで資金繰りをサポートしてもらうことができます。
また、金融機関との調整なども中小企業再生支援協議会が支援してくれるので、事務作業の負担を減らすことが可能です。
すでにリスケを行っている企業も対象になるので、特例支援を受けたい場合はお近くの中小企業再生支援協議会に相談してみるとよいでしょう。
新型コロナの影響で事業が行き詰まっている場合は、たとえば日本政策金融公庫でも特別貸付を行っているように、さまざまな特例を利用することができます。
こういった特例をフルで活用して、難局を乗り切りましょう。
※緊急小口資金及び総合支援資金(初回貸付)について、申請期間は令和4年9月30日で終了となりました。
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