ここでは下記3つについて徹底解説をしていきます。
・銀行による格付けを決定する3つの評価
・格付けによって決められる5つの債務者区分
・正常先とみなされるために重要なポイント
ぜひ、最後までご覧ください。
銀行による格付けを決定する3つの評価
銀行による格付けは、「定量評価」「定性評価」「実態評価」の3つの評価によって、決定されます。
以下では、これらの評価に関わる要素やチェック項目などについて、説明します。
定量評価
定量評価は、それぞれの企業の決算書の内容を格付け用のソフトに入力することで行われます。
格付けソフトには、財務スコアリングモデルと呼ばれる評価基準が搭載されており、その評価基準に従って企業を自動的に評価します。
財務スコアリングモデルに搭載されている評価基準は各行で多少違いはありますが、おおよその方向性は同じで、企業の「安全性」「収益性」「成長性(将来性)」「債務返済能力」が重視されるのが一般的です。
安全性は、企業のデフォルト(債務不履行)の可能性の低さを表しており、以下に挙げる3つの指標が主に重視されます。
- 自己資本比率(自己資本÷総資本)
- 流動比率(流動資産÷流動負債)
- ギアリング比率(他人資本÷自己資本)
収益性は、企業が収益を上げるための効率のよさを表しており、以下に挙げる3つの指標が主に重視されます。
- 売上高経常利益率(経常利益÷売上高)
- 総資本経常利益率(経常利益÷総資本)
- 当期利益額
成長性(将来性)は、企業の将来に対する可能性を表しており、以下に挙げる2つの指標が主に重視されます。
債務返済能力は、金融機関からの借り入れや返済の状況を表しており、以下に挙げる3つの指標が主に重視されます。
- 債務償還年数(【有利子負債-正常運転資金】÷キャッシュフロー)
- キャッシュフロー額(営業利益+減価償却費)
- インタレスト・カバレッジ・レシオ(営業利益÷支払利息)
定性評価
定性評価は、決算書の数値では評価しにくい項目・内容にもとづいて行われる評価で、以下に挙げるような項目が評価基準になります。
- 経営者の能力
- 市場の成長性や将来性
- 企業の技術力
- 経営計画策定能力
- 当該企業について書かれた記事
経営者の能力があまり高くないと判断されると、現状の業績が好調だったとしても、この先の業績には疑問符が付くと判断されてしまう可能性もあるということでしょう。
また、企業自体はどれだけ右肩上がりで成長を続けていたとしても、主戦場とする市場に成長性や将来性が感じられない場合は、企業としての成長の限界も自ずと見えてくることになってしまいます。
実態評価
実態評価は、定量評価にも定性評価にも関係しないような項目かつ、返済に対する企業の潜在的な能力に関わる項目を用いて、企業の融資返済力を判断する評価です。
たとえば、企業のオーナーや関連企業に資産余力がある場合は、実態評価ではプラスの評価を受けることになります。
逆に不渡り手形や土地・証券の含み損などがある場合は、その分だけ資産が控除されての評価となってしまいます。
格付けによって決められる5つの債務者区分
上述した3つの評価を経て、銀行は各企業を10~12段階に分類して信用格付けを行います。
そして決められた格付けをもとにして、銀行は各企業を「正常先」「要注意先」「破綻懸念先」「実質破綻先」「破綻先」の5つの債務者区分のいずれかに分類するのです。
以下では、それぞれの債務者区分について説明します。
正常先
正常先は、業況が良好であり、かつ財務内容にも特段の問題がないと認められる企業のことを指します。
分かりやすく言うと決算書で利益が出ている、つまり「黒字」の企業は正常先であると考えて差し支えありません。
ただし赤字であっても、創業赤字や一過性の赤字など赤字の種類によっては、正常先として判断される可能性があります。
また、企業や経営者に十分な資産があると判断される場合も、正常先とみなされることがあります。
なお正常先は、定量評価における4つの指標(「安全性」「収益性」「成長性(将来性)」「債務返済能力」)に従って、さらに細かく分類されます。
信用格付けでの評価は10~12段階に分けられることは先ほどお伝えしましたが、その中で上から6番目ぐらいまでの格付けと判定された企業が、正常先に分類されるようなイメージです。
要注意先
要注意先は、業績が不調で支払いを延滞していたり財務内容に問題があったりする企業のことを指します。
信用格付けでは正常先に次ぐ評定であり、10段階で評価が行われているとすると正常先が上位6つを占めるので、要注意先は7となります。
決算がどういった状況だと要注意先になるかは、各行で異なりますが、当期利益が赤字だったり融資の返済を遅延していたりすると、要注意先とみなされる可能性が高いと言えるでしょう。
なお、要注意先の企業の中でもとくに、融資に対する返済を長期間遅延していたり返済のリスケを行っていたりするような企業に関しては、「要管理先」として要注意先とは分けて考えることが多いです。
そのため、先ほど要注意先の信用格付けは10段階で7とお伝えしましたが、要注意先と要管理先を分けて考える場合、それぞれの格付けは便宜上、「要注意先:7-1」「要管理先:7-2」となります。
破綻懸念先
破綻懸念先は、現状は経営破綻と呼べる状態ではないものの、経営難の状態にあり、経営改善計画等の進捗状況が芳しくなく、今後経営が破綻してしまう可能性が高いと判断される企業のことを指します。
赤字の状態が軽微であれば要注意先でとどまれますが、債務超過の状態が長期間続いているなどすると、要注意先ではとどまれずに破綻懸念先とみなされてしまう可能性が高いでしょう。
10段階の評価では8に分類されますが、新規で融資を受けられる可能性はまずありません。
むしろ既存の融資がある場合は、金利の上乗せや融資の早期回収などを求められてしまいかねません。
実質破綻先
実質破綻先は、法的・形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状況にあって再建の見通しが立たない状況にあると認められるなど、実質的に経営破綻に陥っている企業のことを指します。
厳密に破綻していると判断されているわけではありませんが、表現からも分かるようにほぼ破綻していると考えても差し支えないような内容であるため、実質破綻先に分類されている場合も、融資を受けられる可能性はまずありません。
10段階の評価では9に分類されます。
破綻先
破綻先は、法的・形式的な経営破綻の事実が生じている企業のことで、具体的には破産・清算・会社整理・会社更生・民事再生・手形交換所の取引停止処分等の事由により、経営破綻に陥っている企業のことを指します。
10段階の評価で10に分類される格付けであり、融資の可能性に関しては説明するまでもないでしょう。
格付けが低いと融資条件に悪影響
銀行が企業の信用格付けを行うのは、各企業に対しての融資可否の判断を行うためです。
財務状況が悪い企業に、喜んで融資を行うような銀行はどこにもありません。
そのため、5つに分類された格付けのうち、銀行から新規融資を受けられる可能性があるのは正常先と要注意先のみです(要管理先を要注意先と分けて考える場合、要管理先は不可)。
それより下の格付けに関しては、先ほども少し触れたように融資を受けられる可能性はありません。
また、融資を受けられる場合でも正常先と要注意先で融資時の条件は異なりますし、正常先の中での位置付けによっても、金利等は変化します。
仮に銀行から事業用に2,000万円の融資を受けるとして、年利での金利が0.5%異なれば、年間での返済金額は100万円近く変わってきます。
借り入れる金額がより大きくなったり金利差がさらに開いたりすれば、返済負担の差はより顕著になるため、銀行格付けによって資金調達および調達後の返済の難易度は大幅に異なり
ます。
そのため銀行の信用格付けにおいては、要注意先よりも正常先、正常先の中でもよりよいとされる格付けを目指す必要があると言えるでしょう。
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正常先とみなされるには決算書が非常に重要
正常先とみなされるためには、定量評価・定性評価・実態評価において高い評価を得る必要がありますが、その中でも特に定量評価が重要です。
実のところ銀行による企業の格付けは、財務スコアリングモデル評価で全体の8割程度が決まると言われているので、定量評価が絶望的な状態だと、定性評価や実態評価での劇的な逆転は期待できないのです。
そのため信用格付けで正常先に分類されるためには、決算書が非常に重要な役割を果たします。
経営計画の提出や四半期ごとのこまめな報告もプラス要因に
決算書による定量評価が重要であることは大前提としつつも、定性評価や実態評価による評価の底上げももちろん重要です。
定性評価と実態評価での加点によって、要注意先から正常先に格上げされることや、正常先の中での格付けが上がることなども、十分考えられます。
決算書を提出する際に経営計画書を一緒に添付するなど、格付けを引き上げるために打てる手はできる限り打つという姿勢が必要です。
格付けの見直しは不定期に行われることもある
銀行における格付けの見直しは、一般的に年度末や四半期ごとに行われると言われています。
もちろんこういったタイミングは銀行が格付けの見直しを行いやすい時期であることは間違いありませんが、こういった時期以外にも、銀行が不定期で格付けの見直しを行うこともあります。
そのため、年度末や四半期末を待たずとも自社の格付けを改善できるチャンスがあるので、いつ抜き打ちでの格付け見直しが行われても大丈夫なようにしておきましょう。
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