短期融資と長期融資とは
短期融資と長期融資は、どちらも金融機関からの事業資金の融資を指しますが、返済期間がそれぞれ異なっています。
一般的に短期融資とは、返済期間が1年以内に収まるような短期間の融資のことです。
一方の長期融資は、返済期間が1年を超えて、3年や5年となるような長期間の融資を指します。
事業資金の融資を受けたい場合は、初めに「短期融資にするのか、長期融資にするのか」というところから、判断しなければなりません。
金融機関の短期融資と長期融資はどちらが審査に通りやすい?
最初に結論からお伝えしておくと、短期融資のほうが比較的審査には通りやすいといわれています。
短期融資の場合、一般的に手形貸付で取引が行われます。
これは1年以内に返済する取引であり、企業と金融機関の間で頻繁に行われています。
一方、長期融資は「証書貸付」として契約されるのが一般的で、返済期間が1年以上となるため、審査基準も厳しくなる傾向があります。
期間が長いほど何かしらの問題が起きる可能性もあがります。
要するに長期融資は、貸し倒れリスクが増し、貸付側のリスクは大きくなってしまうのです。
そのため、長期融資を受けるには、ある程度の信用や信頼が必要となってくるでしょう。
短期融資を繰り返して返済実績を作ることができれば、それが信頼へと変わることもあります。
短期融資と長期融資で借入を行う手順
両者は、借り入れを行う際の手順にも違いがみられます。あらかじめ、それぞれの手順を確認しておきましょう。
短期融資
短期融資の場合、利用頻度が高くなるケースが多く、また1年以内の貸付であることから、一般的な手形貸付の場合、企業が金融機関に借入用手形を差し入れるだけで済みます。
手続きが簡潔なため、その分融資までのスピードも当然速くなるのです。
長期融資
長期融資に用いる証書貸付には、会社の署名・捺印のほかに、保証人の署名・捺印、さらにそれぞれの商業登記簿謄本や印鑑証明書の提出も必要です。
準備にある程度の時間がかかるうえ、審査も短期融資と比べて厳しくなります。
そのため、長期融資を受けることを考える場合は、時間に余裕を持って動くほうがよいでしょう。
金融機関の短期融資の特徴
短期融資の特徴としては、上記でも説明した通り、審査に比較的通りやすく、入金までの期間が速いという点が挙げられます。
加えて、あらかじめ金融機関と約束した期日に、借り入れた金額を一括で返済しなければならない場合もあるのには注意が必要です。
なお、中小企業では、この短期融資を繰り返し利用するケースが多くみられます。
金融機関の長期融資の特徴
長期融資は短期融資と比べて、手続きに手間も時間もかかるうえに、審査も厳しいのが特徴です。
ただし、その分毎月の返済額は抑えられるので、短期融資で借り入れ、短期間で返済するのが現実的ではない金額が必要なときに適しています。
たとえば、設備資金のような大きな金額が必要なときに利用するのをおすすめします。
短期融資が向いているケース
短期融資が向いているケースとして代表的な例は、一時的に資金が不足しているものの、数か月以内(遅くとも1年以内)に返済できる目処が立っているケースです。
大きな金額の取引を行うことが多いものの、その入金は後日となる業界の場合、事業運営は問題ないにもかかわらず、手元の資金が一時的に不足するということが起きがちです。
たとえば不動産開発業などでは、土地を仕入れたり工事をしたりといった理由で、まとまった金額を支出するケースが多々あります。
しかし売上に対する代金が入金されるのは、手がけた物件が売れたあとなので、その間のつなぎ資金として短期融資が利用されるケースが多いです。
ファクタリングという選択肢も
上述したような一時的な資金不足に陥っている場合は、ファクタリングで資金調達を行うのも一つの方法です。
ファクタリングとは、企業が保有している売掛金を早期に現金化するサービスです。
本来であれば支払期日まで1~2か月ある売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、本来の支払期日より前に現金化することが可能になります。
利用者の手元に残るのは、あらかじめ設定された手数料を売掛金から差し引かれた金額ですが、急な資金需要を満たせる点は大きなメリットです。
利用するファクタリングサービスによっては、最短即日で現金化することもできるため、非常にスピーディーな資金調達方法と言えるでしょう。
長期融資が向いているケース
長期融資が向いているのは、設備投資や運転資金などまとまった資金が必要かつ、すぐに返済できる目処が立っているわけではないケースです。
長期融資のほうが、短期融資よりも余裕を持って返済ができますが、金利は高めに設定される傾向にあります。
そのため長期融資は、企業の成長のための原資が必要なときに利用することをおすすめします。
金融機関の短期融資と長期融資はどちらを利用すべき?
短期融資と長期融資、どちらを利用したほうが良いかは、状況によって変化します。
一概にどちらが良いとは言えないため、自社の状況をよく見極めて決めるのが最善です。
短期融資でも十分なら、無理に長期融資を受けることもないですし、短期融資では資金繰りが難しそうなら、少し無理をしてでも長期融資を受けなければなりません。
どうしても決められないのであれば、周りの経験のある方々に相談してみるのも大切です。

自社に合った融資を選ぶためのチェックリスト
自社の状況に応じて選ぶといっても、判断に迷ってしまうこともあるでしょう。どちらの融資が適切かを見極めるにあたり、以下のチェックリストの項目がヒントになります。
【自社に合った融資を選ぶためのチェックリスト】
- いくらの金額が必要か
- いつまでに資金が必要か
- 信用情報に懸念事項はないか
- 金利はどの程度許容できるか
- 審査に落ちた場合はどうするか
各項目を整理することで必要な条件が明確になり、どちらの融資が適切であるかがわかるはずです。
短期融資のメリット
先述の通り、短期融資の方が多くの中小企業に利用されています。中小企業や個人事業主にとって、短期融資は事業の流動性を維持するうえで、非常に有効な手段です。
ここからは、返済期間が1年以内に設定される短期融資に絞り、利用する代表的な4つのメリットを解説します。
【利用する代表的な4つのメリット】
メリット①金利が低い
短期融資は返済期間が短く設定されている分、金融機関にとって貸し倒れのリスクが低くなるため、比較的低金利で借りられます。
たとえば、急な仕入れや季節的な資金需要など、短期的な用途であれば、長期融資よりも総支払額を抑えられる可能性があります。
金利負担を抑えることで資金調達にかかるコストを削減できれば、事業の収益性を維持しながら、必要な資金を素早く確保できるでしょう。
メリット②審査に通りやすい
短期融資は、長期融資に比べて審査のハードルが低いとされています。
先述した通り貸付期間が短いため、金融機関は「貸し倒れのリスクが低い」と考える傾向にあり、柔軟な審査が期待できます。
特に、すでに取引のある金融機関なら、これまでの取引実績が評価され、審査がスムーズに進むことも珍しくありません。
急な資金ニーズに対して迅速に対応できる点は、中小企業にとって大きな安心材料です。
メリット③返済計画を立てやすい
1年以内で取引が完結する短期融資は、返済のタイミングが明確であるため、資金繰りの見通しを立てやすいという利点があります。
長期にわたる返済計画では将来的な不確実性が増しますが、短期であれば現時点の業績や売上予測をもとに現実的な返済スケジュールを組みやすいです。
たとえば、繁忙期に仕入れた在庫を売り切るタイミングで返済するなど、売上のサイクルに合わせて柔軟に対応しやすくなります。
メリット④赤字でも融資を受けられる可能性がある
業績が一時的に悪化し、赤字に陥っている場合でも、短期融資であれば審査を通過できる可能性があります。
融資の審査で金融機関が重視するのは、今後の返済能力や具体的な売上見込みです。大口の受注が確定している場合や、季節的な収益増が見込まれる場合は、現時点で赤字であったとしてもポジティブに評価される可能性があります。
短期融資は、経営が一時的に苦しい状況でも立て直しのチャンスを提供してくれる、重要な資金調達手段なのです。
短期融資で注意したいポイント
短期融資は素早く資金を調達できる一方で、気をつけるべき点もあります。
ここでは、短期融資を利用する際に意識しておきたい4つのポイントを紹介します。
【短期融資を利用する際に意識しておきたい4つのポイント】
契約内容をよく確認する
融資を受ける際には、契約書の内容を細部まで確認することが非常に重要です。
返済期間や金利、返済方法などはもちろん、返済が遅延した際の対応やペナルティなどにも目を通しておく必要があります。
契約内容を十分に理解せずに融資を受けてしまうと、あとになって思わぬトラブルに発展することも考えられます。
特に、初めて金融機関から融資を受ける場合は遠慮せずに質問し、不明点を解消することを心がけましょう。
必要書類の提出期限を守る
短期融資を申し込む際には、財務諸表や事業計画書などの書類が求められます。
これらの提出期限を守らないと、審査が遅れる、または融資そのものが受けられなくなる可能性もあります。
必要書類は事前にリストアップし、不足がないように準備することが大切です。
提出期限に間に合わない場合や、必要書類の内容に不明な点がある場合は、金融機関に早めに相談してください。
1回あたりの返済額を把握する
短期融資は返済期間が短いため、1回あたりの返済額が大きくなる傾向があります。
そのため、融資を受ける前に「月々いくらくらいの金額を返済する必要があるのか」を把握しておきましょう。
無理な返済計画を立てると、かえって資金繰りを圧迫することになりかねません。
現在の収支状況を踏まえて、現実的に返済可能なラインを見極めることが、健全なキャッシュフローにつながります。
融資を断られるリスクを考慮する
短期融資は比較的審査が柔軟とはいえ、必ずしも希望の条件でお金を借りられるわけではありません。業績や信用情報の状況によっては、融資を断られるケースも十分にあり得ます。
そのため、万が一の場合に備えて、ほかの金融機関や消費者金融など、複数の融資元を候補として挙げておくことがおすすめです。
また、審査に通らなかった場合は、自社の財務状態や信用情報を見直して再度融資に申し込む、またはファクタリングを含めたほかの資金調達方法も検討しましょう。

短期融資と長期融資のバランスも重要
本記事では、短期融資と長期融資をさまざまな点から比較しました。
それぞれ異なる特徴があるため、一概にどちらが良いとは言えません。
中小企業では短期融資を利用するケースが一般的ですが、資金繰りの状況によっては長期融資のほうが適しているケースもあります。
また、売掛金の回収までに時間を要し、それまでのつなぎ資金を調達したい方は、ファクタリングの利用もご検討ください。
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資金調達にファクタリングを活用したい事業者様は、ぜひ参考にしてください。
OA機器販売会社にて財務・経理・人事などの要職を歴任し、豊富な実務経験を有する。
2021年には、日本中小企業金融サポート機構の代表理事に就任し中小企業の金融に関わる専門家として、中小企業の経営者や個人事業主が抱える資金面・経営面の課題解決に尽力。
「日本の中小企業の経営者・個人事業主の皆様が抱える資金面や経営面の課題を解決し、日本を元気で豊かにしたい」という信念のもと、さまざまな金融に関する悩みに対し、適切なサポートを提供している。