価格競争を避けるべき理由
製造業では利益を出すにはなるべく価格競争を避けたほうがよいとされています。
価格競争を避けるべき理由について、以下で説明します。
品質低下による顧客離れにつながる
販売価格を安くするためには、従来のコスト構造のどこかを引き下げる必要がありますが、コストが削減されやすいのは仕入れや製造といった過程です。
原材料の質を少し下げたり、製造にかける手間を少し省いたりすれば、当然のことながら品質が悪くなってしまいます。
これまで商品を利用してくれていた顧客が品質が低下したことに気付けば、顧客離れにつながってしまうでしょう。
従業員のモチベーションが低下する
品質の低下を防ぐために、今までと同じ品質の商品を作ろうとする場合、仕入れや製造のコストを大幅に削減することはできません。
すると、「販売価格-仕入れや製造のコスト」が少なくなり、売れても赤字になり経営が圧迫されていきます。
価格競争で販売価格を下げると、受注の増加にはつながるかもしれません。
しかし、受注増加が企業の利益増大に直結するわけではないので、従業員の給料はなかなか上がりません。
従業員の業務負担のみ増えてしまうためモチベーションが低下し、離職率が上がり、結果的によい商品が作れなくなってしまいます。
価格競争で得た顧客は定着しにくい
価格競争で得た顧客は、その価格で商品を購入できることを魅力に感じている層が中心です。
つまり、本質的に商品や会社のファンになっている層ではないため、商品の価格が上がったりほかの企業が似たような商品をさらに安い価格で販売したりすると、すぐに離れていってしまいます。
価格競争によって短期的に顧客を獲得するよりも、商品や会社のファンになってくれる顧客を獲得するほうが、長期的に見れば望ましいと言えます。
価格競争は大企業のほうが有利
技術的な優位性に依存しない価格競争は、消耗戦になりがちです。
長期戦・消耗戦になると、豊富な経営資源を蓄積し、仕入れの際などにスケールメリットを生かすことのできる、グローバル化の進んだ大企業が圧倒的に有利です。
また、とくにBtoCの企業ではネームバリューも重要なので、そういった点でも中小企業が大企業に勝つのはなかなか難しいでしょう。
価格競争に巻き込まれないための対策
上述したように、価格競争に巻き込まれてしまうと多くのデメリットがあります。
そのため、「どのようにして価格競争に勝つか」ではなく、「いかにして価格競争に巻き込まれないか」という観点で考える必要があります。
価格競争に巻き込まれないための対策について、以下で説明します。
顧客が魅力に感じている点を把握する
商品を選んだ顧客がその商品のどのような点を魅力に感じているかを把握することは、非常に重要です。
その魅力がより強化されれば、ライバル商品と比べて多少値段が高くても、自社商品を選んでもらえるかもしれません。
たとえば、近年アルコール業界には第三のビールや発泡酒をはじめとしたさまざまな商品が出てきています。
そんな中でアサヒの「スーパードライ」は、アルコールをよく飲む方が好む「のどごし」「クリアで洗練された味」を、徹底して追及しています。
その結果、値段は第三のビールなどよりも多少高いにも関わらず、一定のシェアをキープし続けています。
逆にその魅力が軽減されてしまうようであれば、結局のところ価格競争で戦うしかなくなってしまいます。
商品を購入した方のアンケートなどを参考にして、顧客にとってのフックとなっている要素の強化を目指しましょう。
商品の正当な価値を伝える
企業や製作担当はその商品の強みや魅力をしっかり分かっていても、その魅力が消費者に届いていないようなケースもあります。
その場合、消費者は価格でしか商品を判断してくれませんから、非常にもったいないと言わざるを得ません。
適切なマーケティングを行って商品の魅力や価値を存分に伝えることで、興味を示してくれる方も出てくるでしょう。
それらを伝えることで得られた顧客は、商品や会社のファンになって定着してくれる可能性が高いです。
近年ではダイソンが、掃除機に関して吸引力・ボディの軽さ・改善された静音性などをマーケティングできちんと伝えることによって、根強いファンを獲得することに成功しています。
商品の独自性を高める
同業他社のほかの商品にはない独自の機能などを商品に持たせることができれば、価格以外のところでの差別化につながります。
自社でしか取り扱っていないユニークな商品を取り扱うことで、価格競争とは無縁でいられるでしょう。
少し前に、さまざまなメーカーが機能性に優れたオーブントースターを次々と発売していた時期がありますが、その発端となったのは「BALMUDA」のトースターでした。
本体価格2万円超えという強気の値段設定でしたが、独自機能である「スチームテクノロジー」と温度制御によって究極のトーストを焼くことができるというのが大きな特徴で、爆発的なヒットを記録しました。
商品開発の時点から、「独自性」ということを強く意識することを心がけましょう。
アフターサービスで付加価値を付ける
価格ではない差別化に関しては、機能面以外にアフターサービスやメンテナンスを強化するという方法も考えられます。
初めて利用する商品や使い方がよく分からない商品・高額な商品を購入する場合、「安心して利用できること」を商品選びの軸にする方は一定数います。
そのような方にとって、アフターサービスが充実していたりメンテナンスを無料で受けられたりする商品は、ほかの商品よりも優先的に選びたくなるでしょう。
トヨタが取り扱う高級車「レクサス」では、オーナー専用のアフターサービスが提供されています。
車は故障などが発生してしまうと困ってしまいますが、24時間365日いつでも窓口が対応してくれるという安心感は、高い出費を伴う買い物の背中を押す要素となってくれるはずです。
アフターサービスやメンテナンスの際に顧客とやり取りをすることで、会社に対して親しみを持ってくれてファンになってくれる可能性があることも重要です。
ブランディングに力を入れる
世の中には、Appleのように出す商品がことごとく大ヒットするような会社もあります。
Appleの商品が大ヒットするのは、商品自体の性能や機能が優れているのはもちろんですが、Appleがブランディングに成功していることも重要な要素のひとつです。
ブランディングの方法は、どのような層をターゲットにしたいかによって異なります。
健康に対する意識が高い層をターゲットにするのであれば、自社の商品の特徴の中でそういった層に刺さりやすい要素を抽出して、広告活動を行うのが効果的です。
子供のいる家庭をターゲットにしたいのであれば、商品の安全性を前面に押し出したり、広告などでも明るくキャッチーな印象を与えるように心がけたりすることが重要です。
なお、ブランディングは一朝一夕で効果が出るものではないので、長期的な施策として実施することを心がけましょう。
資金繰りが悪化したときの解決策
価格競争に巻き込まれると、売れても利益が出ず赤字になってしまい、資金不足になる場合があります。
そのときに利用するとよいのが、売掛金を資金化できるファクタリングです。
ファクタリングでは即日資金化が可能ですし、売掛金を売却してしまうので、売掛先の倒産リスクも負いません。
ファクタリングには2社間契約と3社間契約がありますが、2社間契約の方は売掛先に知らせなくても資金化することが可能ですし、即日での資金化が可能なのも2社間のみです。
一方、3社間契約の場合、売掛先の承認は必要ですが、資金化の手数料が2社間契約よりも低くなるというメリットがあります。
それぞれメリットが異なるので、自社の置かれている状況に応じて2社間か3社間かを選ぶようにしましょう。
ファクタリングはあくまでも、後に入ってくる予定の売掛金を先に資金化しているだけなので、長期的に見れば資金繰りが悪化してしまう可能性もあります。
資金繰りが安定しているうちに、価格競争から脱却するための施策を講じるようにしましょう。