銀行から借り入れたお金を返済する場合、借入金に金利にもとづいて発生する利息を上乗せしたうえで返済しなければならないので、利息がどれぐらい発生しているのかについてはきちんと把握しておかなければなりません。
この記事では借入金利から利息を計算する方法について説明すると同時に、金利別の返済シミュレーションも行います。
ここでは下記3つについて徹底解説をしていきます。
・銀行での借入金利や返済方法
・金利別の返済シミュレーション
・借入金利を低くしてもらうためのポイント
ぜひ、最後までご覧ください。
利息の計算方法は基本的には「借入残高×金利」
利息の正確な計算方法は返済方法によって少々異なりますが(返済方法について詳しくは後述します)、基本的には「借入残高×金利」という計算式で算出されます。
つまり、仮に借入残高が200万円で金利が3.0%だったとすると、発生する利息は「200万円×0.03=6万円」ということになります。
注意しなければならないのは、この計算においては「月利換算した金利」を利用しなければならないということです。
一般的にローンの商品詳細などに記載されている金利は1年間に発生する利息を計算する際に用いられる「年利」ですが、借り入れの返済は基本的に毎月行われるので、そのたびに発生する金利を計算するためには、「年利÷12」で計算される月利を用いる必要があるのです。
先ほど例に挙げた「借入残高200万円、金利3.0%」の金利が年利だったとすると、このときに発生している利息は正しくは「200万円×(0.03/12)=5,000円」と算出されます。
金利を月利換算することを忘れてしまうと、ケタ数から異なる値を算出することになってしまうので、利息計算を行う際は必ず月利を用いることに注意しておきましょう。
銀行の借入金利は大きく分けると2つ
銀行の借入金利は、「固定金利」と「変動金利」の2つに大きく分けられます。
それぞれの金利の違いについて、以下で説明します。
固定金利
固定金利は、借入時に銀行と借主との間で取り決めた金利が、完済時まで変更されない金利です。
金融機関は経済情勢の変化に応じて、融資時の金利を適宜変更させますが、固定金利では経済情勢にどのような変化が起きようとも金利はずっと一定です。
そのため、金利が上昇している局面は借主にとって有利になりますが、逆に金利が下がっている局面では、少し割高な金利で融資を受けていることになってしまいます。
今後融資金利が上昇するだろうと判断できる材料があるのであれば、固定金利で融資を受けるとよいでしょう。
変動金利
変動金利は、銀行の短期プライムレートを基準にして変動する金利です。
短期プライムレートは、各行が市中金利などを参考にして決定するため、好景気になって市中金利および短期プライムレートが上昇すれば、それに伴って変動金利も上昇します。
逆に言えば市中金利が引き下げられれば変動金利も下がることになるので、今後あまり景気の好転が望めず金利が下がっていきそうだと判断する場合は、変動金利で融資を受けるのが得策と言えそうです。
固定金利で受けた融資の金利を途中で変動金利に変更してもらうのは基本的に難しいので(逆も然りです)、どちらの金利で融資を受けるかについては、しっかりと考えて判断しなければなりません。
返済方法も大きく分けると2つ
金利には固定金利と変動金利の2つの種類がありましたが、返済方法も「元金均等返済」と「元利均等返済」の2つに大きく分けることができます。
それぞれの返済方法の違いについて、以下で説明します。
元金均等返済
元金均等返済は、借入金額の総額を完済日までに均等に分割して返済する方法です。
毎回返済する元金は同じ金額ですが、そこに借入残高に応じて発生する利息も加えて返済しなければなりません。
利息は借入残高が大きいほうが多く発生するため、まだ返済が進んでおらず借入残高が減っていない返済初期は、利息による返済負担が重くなりがちです。
ただし、後述する元利均等返済と比べると、返済総額は少なく済むという利点があることは見逃せません。
返済初期に多少負担を抱えてもかまわないから、全体的な返済総額を減らしたいという方におすすめの返済方法です。
元利均等返済
元利均等返済は、毎月の返済における元金の返済額と支払利息の合計額が同じ金額になるように調整して、返済する方法です。
返済当初は毎月の支払額における利息の割合が大きいですが、返済が進んでいき借入残高が減ってくると、徐々に利息の割合が小さくなっていきます。
毎月同じだけの金額を返済し続ければいいので、返済計画を立てるのが容易であることは大きなメリットと言えるでしょう。
ただし、先ほど説明した元金均等返済と比べると全体的な返済総額が増えることは、考慮しておかなければなりません。
返済計画の立てやすさや常に返済負担が一定であることなどを魅力に感じるのであれば、返済方法として元利均等返済を選ぶのがおすすめです。
金利別の返済シミュレーション
ではここで、金利の違いや返済方法の違いが返済にどれぐらいの影響を与えるかについて実感できるように、シミュレーションを行ってみましょう。
「借入金額2,000万円、返済期間10年」という条件で、金利および返済方法を変えた場合のシミュレーション結果を、以下に示します。
金利2.0%
まずは金利2.0%で借り入れを行った場合の、元金均等返済と元利均等返済それぞれでの返済シミュレーション結果です。
元金均等返済 |
元利均等返済 |
初回返済額 |
199,999円
(元金分166,666円、利息分33,333円) |
184,026円
(元金分150,693円、利息分33,333円) |
最終回返済額 |
167,023円
(元金分166,746円、利息分277円) |
184,084円
(元金分183,778円、利息分306円) |
返済総額 |
22,016,518円
(利息2,016,518円) |
22,083,120円
(利息2,083,120円) |
元金均等返済では、最終回で余った分の調整を行っているので完全に同じとはいきませんが、最初と最後の返済金額における元金分がほぼ同じであることが分かります。
また、元利均等返済では初回も最終回も返済金額は同じで、元金と利息の内訳が異なっています。
返済総額に関しては、元利均等返済のほうが元金均等返済よりも7万円弱ほど多くなっていますが、2,000万円という金額を借りたことから考えると、そこまで大きな差は出ていないように感じられるかもしれません。
これは、2.0%という低めの金利の影響が大きく、金利が高くなればなるほど、元金均等返済と元金均等返済の総返済額の差は大きくなります。
金利5.0%
続いて金利5.0%で借り入れを行った場合の、元金均等返済と元利均等返済それぞれでの返済シミュレーション結果です。
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元金均等返済 |
元利均等返済 |
初回返済額 |
249,999円
(元金分166,666円、利息分83,333円) |
212,131円
(元金分128,798円、利息分83,333円) |
最終回返済額 |
167,440円
(元金分166,746円、利息分694円) |
212,055円
(元金分211,176円、利息分879円) |
返済総額 |
25,041,507円
(利息5,041,507円) |
25,455,720円
(利息5,455,720円) |
元金均等返済と元利均等返済それぞれの特徴はもちろん変わりませんが、金利2.0%のときと比べると支払わなければならない利子の金額が、300万円近く増えていることが分かります。
また、同じ金利で借り入れを行った場合の元金均等返済と元金均等返済の利子総額の違いも、金利2.0%のときは7万円弱程度だったのですが、金利5.0%では40万円強になっています。
金利10.0%
最後に金利10.0%で借り入れを行った場合の、元金均等返済と元利均等返済それぞれでの返済シミュレーション結果です。
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元金均等返済 |
元利均等返済 |
初回返済額 |
333,332円
(元金分166,666円、利息分166,666円) |
264,301円
(元金分97,635円、利息分166,666円) |
最終回返済額 |
168,134円
(元金分166,746円、利息分1,388円) |
264,300円
(元金分262,116円、利息分2,184円) |
返済総額 |
30,083,154円
(利息10,083,154円) |
31,716,120円
(利息11,716,120円) |
金利が10.0%になると、借りた金額は2000万円のはずなのに、返済総額は3,000万円を超すようになってしまいます。
同じ金利で借り入れを行った場合の元金均等返済と元金均等返済の利子総額の違いも、160万円近くとなかなか無視できない金額になってきています。
今回はあくまでもこちらで条件を設定してのシミュレーションでしたが、実際に銀行からお金を借りようかと思っている場合は、自分の条件に当てはめたうえでシミュレーションを行いましょう。
関連記事:【相場はどれくらい?】個人事業主が銀行融資を受ける場合の金利とは
借入金利を低くしてもらうための3つのポイント
上掲したシミュレーション結果から、借り入れを行う場合はできるだけ低い金利を適用してもらい、返済負担を抑えられるようにすることが重要だということが、お分かりいただけたと思います。
銀行での借入金利を低くしてもらうためのポイントとしては、以下のようなことが挙げられます。
- 銀行の格付けを改善する
- 計画性のある資金繰り表や経営計画書を提出する
- 適切な会計処理を行う
それぞれのポイントについて、説明します。
銀行の格付けを改善する
銀行は取引のある企業に対して格付けを行い、以下のように分類しています。
正常先
- 要注意先
- 要管理先
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
- 破綻先
よりよい格付けに分類されているほど好条件での融資を受けやすいので、借入金利を低くしてもらいたければ、なるべくよい格付けに分類してもらうことが重要です。
格付けを改善してもらうための方法としては、業績を上げて連続での黒字を達成したり、財務状況を見直してキャッシュフローをよくしたりといったことが考えられます。
どれも一朝一夕にできることではないのはもちろんですが、できる範囲のことからでよいので少しずつ努力するように心がけましょう。
関連記事:【自分の会社の信用は?】銀行融資で重要な「信用格付け」を徹底解説
計画性のある資金繰り表や経営計画書を提出する
資金繰り表や経営計画書は、法人や個人事業主としての財務体質や返済能力を判断する重要な書類です。
財務体質がしっかりしており、返済能力もあると判断された法人・個人事業主に対しては、銀行も安心してお金を貸すことができるので、好条件で資金を調達しやすくなります。
しかし、借入金利を低くしてほしいという思惑で、計画性や実現性のない資金繰り表・経営計画書を提出するのは好ましくありません。
銀行はそういった書類を確認するプロなので、経営計画書などの内容が実現可能なものか絵に描いた餅なのかは、的確に判断されてしまいます。
中長期的な計画や、それを裏付けるデータなどを盛り込み、銀行を納得させられる書類を作成しましょう。
関連記事:【なぜ落ちた?】銀行借り入れにおける審査のポイントとは?
適切な会計処理を行う
適切な会計処理が行われているかどうかも、銀行での借り入れを考える際に注意しておかなければならないポイントのひとつです。
会計処理が適切であるかどうかの判断には、「中小企業の会計に関する指針」と呼ばれる指針が利用されることが多いです。
この指針は、日本税理士会連合会・日本公認会計士協会・日本商工会議所・企業会計基準委員会によって作成されたもので、中小企業が一定の基準を満たした財務書類を作成できるように公表されています。
この指針に沿った形で会計処理を行っていると、会計処理が健全であると判断されて銀行からの信用度が高まり、融資を受けやすくなります。
会計処理の方法如何で、融資の受けやすさや融資を受ける際の条件が変わるのであれば、なるべく銀行が求める形で会計処理を行うようにするのが望ましいことは、言うまでもありません。