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仮想通貨で資金調達! ICOの基礎知識

資金調達は、多くの経営者や経理担当者の頭を悩ませている経営上の共通課題です。成功するかどうかは、数ある調達方法の中から自社にとってメリットが大きい方法を見極められるかどうかにかかっています。この記事では、ICOによる資金調達のやり方や注意点について解説します。
目次
短期間で資金調達が可能? ICOとは
ICOはInitial Coin Offeringの頭文字3文字を取った略語です。Initialは「初期の」、Coinは「通貨」、Offeringは「募集」という意味ですから、「新規仮想通貨公開」という日本語に訳されることもあります。分かりやすく言い換えると、仮想通貨を発行する形で事業を起こすための資金を募集する仕組みです。仮想通貨はインターネット上で決済手段として利用できる通貨で、現金のような実体がありません。企業が独自の仮想通貨を発行することができ、そのままの形で取引に利用する以外にも、別の仮想通貨や法定通貨と交換することが可能です。
法定通貨を介して資金調達をする場合、投資家には株券を発行するなどして信用を築きます。その点、現金のような実体を持たない仮想通貨を介するICOでは、株券の代わりにトークンを発行するのが特徴です。自社発行の仮想通貨を購入してもらったり、自社発行のトークンは市場で流通している仮想通貨で購入してもらったりする形で資金調達を行います。仮想通貨やトークンなどのネットワーク上の通貨を介するというだけで、基本的には従来の現金や株取引による資金調達と同じです。最初の取引価格との差額が利益や損失になります。
ICOで資金調達する場合、インターネットを通じての取引になるので、証券会社などへの仲介手続きが不要です。また、場所や時間など取引環境にとらわれないので、国内外を問わず広く資金を募ることができます。さらに、募った資金の返済義務も発生しません。ICOはよりスピーディーな資金調達が可能な方法として注目されている手段です。
ICOによる資金調達を検討する上で理解しておきたい用語
ICOによる資金調達のやり方やメリット・デメリット、注意点など、検討する上で必要なことは、専門用語なしでは語れません。この段落では、説明内容を理解するために最低限知っておく必要がある用語について解説します。
仮想通貨
仮想通貨とは、インターネットを介した電子的な取引で使用できる通貨です。法定通貨のような国家による裏付けや強制通用力は持たないまま、不特定多数の人や企業間の取引に利用されます。安全性の維持には、公開鍵暗号やハッシュ関数などの暗号技術を用いるのが一般的です。
仮想通貨のうち、最も時価総額が大きいのは、2008年に運用を開始したビットコインで、仮想通貨の代名詞ともなっています。ブロックチェーンという技術を利用して通貨の価値を維持したり移転を行ったりしている点が特徴です。そのため、ビットコインから分裂・派生した仮想通貨も数多く見られます。
ビットコインに次いで時価総額が大きいのは2015年に運用を開始したイーサリアムです。「スマートコントラクト」を利用することによって、従来よりも契約の執行から履行までをスピーディーかつ安全に行える点が優れています。
トークン
トークンとは「これ以上の分解は不可能な最小単位」を意味するIT用語です。仮想通貨の取引においては、企業や個人などが独自発行するcoinのこともトークンといいます。仮想通貨と異なる点は、企業や個人が発行数を自由に決められる点と、発行した企業や個人が展開するサービスを利用する場合にしか価値を持たない点です。
株取引における株券のようなものと表現されることが多いトークンですが、通用する範囲が狭いことから、実際の株券よりもポイントカードに貯めたポイントに近いといえます。
ホワイトペーパー
ホワイトペーパーとは、元々は政府などが発行する報告書を意味する言葉です。イギリス政府が発行した公開文書が白かったことから名づけられたもので、日本でも政府が発行する報告書を白書と呼びます。ただし、仮想通貨の取引で使われるホワイトペーパーとは政府が発行する文書のことではありません。仮想通貨に関する公開文書のことです。
仮想通貨は種類が多く、それぞれ構想や技術内容などが異なっています。ICOなどでは、事前にホワイトペーパーの内容を確認することによって、投資家が参加するかどうかを決めるのが一般的です。
ブロックチェーン
2008年に運用を開始したビットコインの取引を可能にしている中核技術がブロックチェーンです。分散型取引台帳と訳される技術で、取引を行っているユーザーが相互にシステムを管理する仕組みです。銀行のような一元管理ではなく、取引の情報が複数のコンピュータで分散管理されるので、金融機関を経由せずに管理することが可能です。コストを抑えられる上に、システム障害に強い仕組みといえます。
ブロックとは複数のトランザクション(取引履歴)をまとめたものを意味する言葉です。ブロックが鎖状に連なった状態になるのでブロックチェーンと名付けられています。
仮想通貨交換業
仮想通貨交換業とは、仮想通貨の入手、法定通貨や他の仮想通貨との交換を仲介する事業を意味します。ユーザーが仮想効果を入手、換金する際に利用する取引所や交換所が行っている事業のことです。
利用者の保護やマネー・ロンダリングを防止するために、仮想通貨交換業者は登録制が採用されています。日本国内で仮想通貨交換業を行えるのは金融庁や財務省に登録した事業者のみです。
ICOによる資金調達のメリット・デメリット
ICOによる資金調達は、投資家のみならず企業にとってもメリットがあるものです。例えば、金融機関を間に挟まず取引できるので、手数料を低く抑えることができます。
また、インターネット上での電子取引という形を採ることで、募集対象が世界中に広がるという点もメリットです。これにより、短時間で多くの投資家から資金を集めることができます。そして、何よりも企業にとって大きなメリットは、集めた資金に対する返済義務がないということです。
ただし、デメリットがないというわけではありません。資金調達に先駆けて、仮想通貨やトークンの発行に関してホワイトペーパーを作成しなければならない点などです。投資家から資金を引き出すためには、納得してもらえるような情報の提示が必要になります。
また、仮想通貨の取引に関しては、2017年4月1日付けで規制強化が行われたため、今後規制強化がないとは言い切れません。ICOによって集めた資金は返済義務がないとはいえ、失敗した場合には、投資家に多大な損失を与えるということを理解しておくことも必要です。なぜなら、返済は免れても、信用を失うことになってしまうからです。
トークンの種類
ICOによる資金調達をするためには、トークンにはどのような種類があるかを知っておくことも必要です。企業が発行するトークンには次のような種類があります。
仮想通貨型トークン
ビットコインなど既に流通している仮想通貨や法定通貨のように、実際の決済に利用できるトークンです。ICOに際して発行したトークンは仮想通貨取引所に上場されます。トークンの形のまま法定通貨や他の仮想通貨に換金でき、支払いに使用することも可能です。
会員権型トークン
トークン自体を換金したり支払いに利用したりすることはできません。しかし、ICOの際に発行されたトークンを持っていることで、プロジェクト主催のイベントやサービスなどで優待を受けられます。株券を保持することで何らかの恩恵を受けられる株主優待と同じような仕組みです。
プリペイド型トークン
「商品券型」とも呼ばれるトークンです。ICOによって集めた資金を利用したプロジェクトが何らかのサービスを作り出したら、それを投資家に利用してもらいます。投資家にとっては、投資した結果がどのような形になったかを確認できる点が魅力です。
ファンド持ち分トークン
ICOによる資金調達で行われたプロジェクトが利益を生み出した際には、トークンの保有量に応じた配当を支払うことを約束したトークンです。保有していることが利益につながる点が、株券に対する配当と似ています。プロジェクトが軌道に乗ればその分配当も多くなるので、上場株式と同じような感覚で投資を受けやすいトークンです。
アプリケーション・プラットフォーム型トークン
ブロックチェーンなどのプラットフォーム上に作られたアプリケーションで発行するトークンです。スマートフォンのSNSアプリなどで独自発行され、限られたサービスにのみ使えるコインなどをイメージすると理解しやすいでしょう。発行量も利用量もアプリケーションの人気に左右されます。
ICOによる資金調達の流れ
ICOによって資金調達を行うことを決めたからといって、いきなり「ICOする」と発表をできるわけではありません。まずは、どのような形でICOを行うか計画を立てます。どのようなトークンを介するかによって、資金決済法の規制にかかる可能性があるからです。
例えば、仮想通貨型トークンで資金調達するなら、仮想通貨交換業の登録が必要になります。そして、次に行うのが独自トークン発行とICOの事前準備です。ICOの実施を告知するWEBサイトを作成し、投資家へプロジェクトの魅力や投資のメリットをアピールするホワイトペーパーを作成します。さらに、プレスリリースやSNSの利用、メディアの取材などの形で、トークン発行やICO実施のアナウンスを行うことも大事です。
また、ホワイトペーパーを作成せずに投資を集める場合でも、オファーの設定は必要になります。オファーとは、企業と投資家との間の契約条件を定めたものです。ICOの開始と締切日、発行されるトークンの性質、プロジェクトの期限、最低投資金額などの設定を行います。
その後は、プレセール、トークンセールという流れになるのが一般的です。プレセールはICO本番前に行われるトークンの販売なので、通常よりも安値で取引したり、特典を付けたりします。一方、トークンセールはICO本番の販売で、不特定多数の投資家を相手とする取引です。
ICOで資金調達するときの注意点
ICOを実施して資金を調達する際には、改正資金決済法や犯収法などの仮想通貨の取引を取り締まる法規制に注意が必要です。そのためには、ICOの準備段階で、法規制に抵触しないように仮想通貨に当たらないトークンを選ぶか、抵触しないように仮想通貨交換業の登録を行うかという判断をしなければなりません。
また、ICOを実施して資金調達をした場合でも、資金が集まったからそれで終わりというわけにはいきません。返済義務を負わない分、しっかり資金を活かしてプロジェクトを成功させる必要があります。投資家の信用を得られるように運用することが重要です。
ICOによる資金調達を実施すると、短期間で高額の資金を調達する可能性が膨らみます。しかし、改正資金決済法など仮想通貨の取引を取り締まる法規制があるので、実施に際しては注意が必要です。仮想通貨やICOの基本的な内容については十分に理解した上で進めるようにしましょう。
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