塾経営には小スペースで開業できて不良在庫の心配がないなど、多くのメリットがあります。また、教育を通じて社会に貢献できるのも魅力的です。しかし、その一方で、実際に塾を開いて独立したものの、なかなか経営が軌道に乗らないというケースも少なくありません。そこで、塾経営に失敗する原因とその対策について解説をしていきます。
ここでは下記3つについて徹底解説をしていきます。
・学習塾経営の難しさ
・塾経営で失敗する原因
・塾経営で失敗しないための対策
ぜひ、最後までご覧ください。
学習塾経営の難しさ
深刻な社会問題となっている少子高齢化は、塾経営にも大きな影を落としています。
日本の総人口がピークに達したのは2008年のことで、それ以降は一転して減少を続けています。
一方、日本人の平均寿命は伸び続けているので、これは生まれてくる子供が急速に減っている事実を意味しています。
実際、そのあおりを受け、生徒を確保できずに廃業となる学習塾も少なくありません。
特に、都市部では塾の数は飽和気味であり、個人経営の塾が新規参入するのは厳しいという実態が浮かび上がっています。
しかも、少子高齢化の傾向はこれからも続いていくのは確実視されており、100年後の人口は現在の半分以下になるとの予測も出されています。
当然、高齢者の割合は今以上に大きくなるので、子供人口は総人口よりも早いペースで減っていくはずです。
つまり、今はなんとか生徒を集めることができていたとしても、これから先はますます厳しくなっていくでしょう。
少子高齢化が加速する中で生徒を確保していくことは、業界特有の課題と言えます。
学習塾経営にフランチャイズは有効?
学習塾で起業した際にもっとも頭を悩ませるのが、いかにして集客するかということです。
子供の数が減り、他の塾との競争が激しくなるほど、生徒を集めるのは難しくなります。
その点、大手学習塾のフランチャイズに加盟すれば、その知名度を利用して生徒を集めることができます。
少なくとも、無名の個人塾と比べれば集客効果は絶大でしょう。
そのうえ、運営側からさまざまなサポートを受けることもできます。
たとえば、教室に使用するテナントを紹介してもらったり、必要な設備や備品の発注を注文してもらったりという具合です。
また、講師の手配や経営ノウハウの指導などもしてくれます。
このような体制のおかげで初心者でも安心して塾の経営に取り組むことができるわけですが、それらのメリットは無償で享受できるわけではありません。
塾の経営者は数々のメリットの見返りとして、「加盟金」や「ロイヤリティ」などを払わなくてはならないのです。
加盟金やロイヤリティの金額は決して安いものではありません。
その点が、フランチャイズに加入することの大きなデメリットだと言えるでしょう。
塾経営で失敗する原因とは
塾経営が失敗してしまう原因としては、以下のようにさまざまなことが考えられます。
立地の悪いところで開業してしまう
塾の経営でもっとも重要なことは、生徒を確保することです。
生徒を確保するための重要な要素のひとつに、「塾の立地」があります。
まわりに塾があまりないところを選ぶというのは、競合を避けるという観点ではよい判断ですが、場合によっては悪手になることもありえます。
周辺に塾に通ってくれるような子供があまりいなかったり、車でなければ通えないような場所で保護者の送り迎えの負担が大きくなったりする可能性があるからです。
立地に関しては、「周辺に塾がない=競合が塾を運営したがらない理由がある」という観点を持ったうえで、判断を下す必要があります。
大手と同じ方針の塾にしてしまう
個人が塾経営を行う場合、大手と同じ方針の塾にしてしまうのはありがちな失敗です。
確かに大手塾の方針は理にかなっていますが、それと同じ方針で授業を行ったとしても、知名度やブランドに勝る大手塾に勝てないことは明白です。
地元密着型のカリキュラムにしたり(○○中学校の授業進度に沿った内容にする、など)、宿題の質と量にこだわったりなど、大手ではなかなか真似できない方針にすることを意識しましょう。
質のよい講師を確保し続けられない
授業を行う講師は、塾の質や評判に大きく影響します。
自身のみが授業を行うような小規模な塾であれば問題ありませんが、少し規模を大きくしようと思うと講師を数名採用しなければなりません。
ただ、塾の講師は学生やフリーターのアルバイトでまかなわれることが多いです。
採用した人たちは数年経てば講師を辞めて別の職に就いてしまう可能性が高いため、質のよい講師を確保し続けて授業や塾の評判をキープするのは、至難の業です。
「授業料の安さ」を売りにしてしまう
授業料を安くして生徒を確保する、いわば価格競争をしかけるのは一時的には効果的かもしれませんが、長期的に見ればあまり好ましくありません。
授業料の安さに惹かれて子供を通わせることを決めた家庭は、近くにより授業料の安い塾が開業したら、そちらに乗り換えてしまう可能性が高いからです。
そこからさらに授業料を安くして対抗しようとするのは、資金力の乏しい個人塾にとって得策とは言えません。
塾経営で失敗しないための対策
上述したように、塾経営にはいくつもの落とし穴があります。
そういった落とし穴にはまらないように、塾経営で失敗しないための対策を以下でいくつか紹介します。
塾の運営方針を明確に定める
どのような方針で塾の運営を行うかに関しては、開業前に明確に定めておかなければなりません。
学校のフォロー等は行わずに難関進学校への受験対策のみを行う、受け入れる生徒を少数に留めてそれぞれの子に沿ったカリキュラムを提供するなど、個性が必要です。
そういった個性を備えた塾であれば、近くに塾がオープンして価格競争をしかけられたとしても、オンリーワンの存在であるがゆえに生徒が流出する可能性は低いでしょう。
ニーズがあるのか入念な調査を行う
大手とは異なる運営方針を定めることは重要ですが、それが子供を塾に通わせたい保護者のニーズにマッチしていなければ、意味がありません。
たとえば上述したような「難関進学校への受験対策のみを行う」という塾を開業したとしても、近隣に評判のよく偏差値も高い公立校があるような環境では、生徒が集まりにくいことが予想されます。
周辺の公立校の偏差値、近隣の保護者の教育に対する熱意、同業他社が提供しているカリキュラムなどをリサーチして、ニーズがありそうかどうかをきちんと調査しましょう。
人材紹介サービスなどを活用する
講師を募集する場合、バイトの求人を出したり個人的なツテを頼ったりというケースは多いですが、その方法だと講師の数および質を維持し続けるのが難しくなりがちです。
人材紹介サービスを活用することで、講師に適性のある人を採用しやすいですし、講師が辞めてしまう場合でも新たな講師の採用が容易です。
人材紹介サービスを利用すると費用がかかりますが、塾の運営を継続するための必要経費だと割り切って考えましょう。
講師がすべてを負担する形にしない
塾の仕事は、生徒に授業を教えるだけではありません。
宿題を作成したり、生徒からの質問に答えたり、保護者からかかってくる電話に対応したりと、さまざまな業務があります。
これらの仕事をすべて塾講師が負担してしまうと、すぐにキャパオーバーになってしまうので、可能であれば事務スタッフなどを雇って仕事を切り分けるのが望ましいです。
塾の規模や方針などによって業務量や必要なスタッフの人数は変わってきますので、それぞれの塾に合ったスタイルを模索・維持することを心がけましょう。
経営が厳しいときの資金調達方法
どれだけ綿密な計画を立てて学習塾の経営を始めたとしても、不測の事態によって資金繰りが厳しくなるケースは出てきます。
そうした場合に資金調達の方法として利用を検討したいのが、ファクタリングです。
ファクタリングとは、売掛金を譲渡する見返りとして資金を得る方法です。
一般企業で取引が行われる場合は、商品を先に渡し、お金の支払いは数ヵ月先というケースも珍しくありません。
その未回収のお金を売掛金といいますが、その売掛金をファクタリング会社に譲渡することによって、売掛金から手数料を引いた分のお金をファクタリング会社から受け取ることができるのです。
この資金調達サービスを利用すれば、企業は支払期日より早くお金を得ることができます。
塾の場合でも授業料を売掛金として、ファクタリングを利用できる可能性があります。
急にまとまった資金が必要となったときには、選択肢の一つとして検討してみるとよいでしょう。
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