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介護事業の資金繰りが悪化する原因と解決策

かつてないほどの高齢化社会を迎え、介護事業の需要が高まっています。
しかし、その注目度とは裏腹に、資金繰りに悩んでいるという介護事業の経営者が少なくありません。
この記事では、介護事業に携わる会社において資金繰りが悪化する原因を分析するとともに、解決策や対応策を詳しく解説していきます。
ここでは下記3つについて徹底解説をしていきます。
・介護事業の資金繰りが悪化する原因
・介護事業の資金繰りを悪化させないための注意点
・介護事業に適した資金調達方法
ぜひ、最後までご覧ください。
目次
介護事業の資金繰りが悪化する原因
介護事業には、ほかの業界とはかなり異なる特有のビジネスモデルがあります。
そのため、一般的なサービス業の感覚で経営していると、すぐに資金繰りが悪化してしまう恐れがあるため注意が必要です。
以下では、介護事業の資金繰りが悪化する主な原因をみていきます。
介護報酬の入金のタイムラグ
一般顧客を対象とするサービス業は、売掛金のようなものがほとんどありません。
つまり「BtoCビジネス」であるため、サービスの提供と同時、場合によっては前に現金を手にできることが一般的です。
しかし、介護保険制度が適用される介護事業は回収サイトが長く、サービスを提供してから介護報酬が入金されるまでに約2ヵ月もの時間がかかります。
このタイムラグが、介護事業の資金繰りを苦しくさせる原因になっています。
事業者が国保連に請求し、入金されるまでに必ず要する時間であるため、短縮することは不可能です。
そのため、介護事業者はこのタイムラグに備えて手元に運転資金を確保しておくことが重要になるのです。
特に開業直後や事業拡大などを行った際には、このタイムラグの影響を受けやすいため注意が必要です。
経費の圧縮が困難
介護事業は、かなり極端な労働集約型のビジネスモデルです。
人件費が経費の半分以上を占めることも珍しくありません。
一般的な事業では人件費を圧縮して経費を削減することも可能ですが、介護事業では非常に困難です。
従業員のサービスレベルそのものが事業所の評価につながるため、優秀な人材を確保しておく必要があるからです。
また、介護業界は慢性的な人手不足に悩まされています。
給与水準を下げると従業員の確保が困難になり、事業の存続そのものが難しくなってしまう恐れがあります。
なんとか事業を継続できたとしても、従業員の負担が増大してしまう可能性があります。
利用者が少なくても常に人員が必要
介護事業では、法律によって人員基準が設けられています。
たとえば通所介護(デイサービス)の場合、生活相談員・看護職員・介護職員・機能訓練指導員・管理者を、それぞれ定められた人数以上配置していなければなりません。
都道府県によって必要な人数は異なりますが、それぞれ最低でも1名配置していなければならないとしても、少なくとも5名の人員を雇用しなければならないわけです。
利用者がほぼいないような状態であってもそれだけの人数を雇用しなければならないので、利用者が増えなければ資金繰りは悪化の一途をたどるでしょう。
介護事業の資金繰りを悪化させないための注意点
事業を成功させるためには、利益を追求する姿勢が不可欠です。
しかしながら、介護事業の場合は、利益だけでなく手元資金の確保も同じくらい大切です。
いくら帳簿上の利益が出ていたとしても、介護報酬が入金されるまえに運転資金が枯渇してしまうと、事業の継続そのものが困難になってしまうからです。
そのため、介護事業の経営者はキャッシュフロー経営を意識することが必要です。
たとえ利益につながることでも、キャッシュフローを悪化させる施策は極力避ける姿勢が必要になるということです。
キャッシュフローを悪化させる施策の代表的なものとしては、「借入金の繰上げ返済」が挙げられます。
一時的に資金に余裕ができたとしても、安易に繰り上げ返済をすることは得策ではありません。
借入金の繰上げ返済には、長期的にみれば将来支払う利息を削減するという効果があります。
しかし、手元資金が枯渇するということは倒産を意味します。
キャッシュフローの余裕を犠牲にするというリスクをおかしてまで繰上げ返済をすることは、介護事業においては悪手と言えるかもしれません。
また、「過剰な設備投資」にも注意が必要です。
減価償却による節税効果を狙って設備投資を増やす経営者も少なくありませんが、キャッシュフローを優先する必要のある介護事業では、リスクの高い手法であると言えるでしょう。
介護事業に適した資金調達方法
介護事業のキャッシュフローに余裕を持たせるためには、融資などを有効活用することが確実で安全な方法です。
以下では、介護事業に適した資金調達の方法をいくつか紹介していきます。
日本政策金融公庫の創業融資制度
事業を始めたばかりという人でも利用しやすいのが、「日本政策金融公庫」の「新創業融資制度」です。
一定の要件を満たせば、無担保・無保証かつかなりの低金利で融資を受けられるという特徴があります。
融資限度額は3,000万円で、うち運転資金の上限は1,500万円です。
事業を開始する場合だけでなく、事業開始後で税務申告2期をまだ終えていないという人でも利用することが可能です。
ビジネスローン
「ビジネスローン」は事業資金に利用できるローン全般を指しますが、金融機関によって内容はさまざまです。
不動産を担保とするローンが一般的ですが、無担保のものもあります。
最近では、介護事業者向けに介護報酬を担保にしたビジネスローンに対応している業者も出てきており、注目を集めています。
関連記事:ビジネスローンとは?特徴やメリット・デメリットを徹底解説
中小企業労働環境向上助成金
雇用管理制度の導入などを行う、健康・環境・農林漁業分野等の事業を営む中小企業の事業主が受けられる助成です。
導入した制度に応じて、30万円または40万円の支給を受けることができます。
なお、この助成を受けるためには、あらかじめ「雇用管理制度整備計画」を作成して、都道府県労働局長の認定を受ける必要があることには、注意しておきましょう。
人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)
介護事業主が介護福祉機器の導入等を通じて、離職率の低下に取り組んだ場合に助成対象となります。
支給される金額は「介護福祉機器の導入費用」「保守契約費」「機器の使用を徹底させるための研修費用」の合計額の20%(生産性要件を満たした場合は35%)です。
なお、この助成を受けるためには、あらかじめ介護福祉機器の導入・運用計画を作成して、管轄の労働局長の認定を受ける必要があります。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者が行う生産性向上などの取り組みに要する経費の一部を支援する制度です。
補助金額の上限は50万円で、補助率は3分の2です。
経営計画書および補助事業計画書を作成し、審査を経て採択が決定された後で、所定の補助を受けることができます。
キャリアアップ助成金
非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップ促進のための取り組みを実施した事業主に対して、助成を行う制度です。
助成金額は、有期→正規や有期→無期といった、キャリアアップの枠組みなどによって変わります。
また、生産性要件によっても変わるので、詳しくは厚生労働省のホームページなどでご確認ください。
トライアル雇用助成金
職業経験、技能、知識等から安定的な就職が困難な求職者について、ハローワークや職業紹介事業者等の紹介によって一定期間試行雇用した場合に助成を受けられる制度です。
受給要件が細かく設定されており、支給額も雇用した人の就労日数などに基づいて変動するので、こちらも詳しくは厚生労働省のホームページなどでご確認ください。
参照:トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)|厚生労働省
ファクタリング
「ファクタリング」とは、「売掛債権買取(譲渡)」を行うことで予定よりも早く現金を手にすることができるサービスです。
資金化までのスピードが極めて早いことから、急いで資金を調達する必要がある場合の手段として注目を集めています。
一般的な売掛債権だけでなく介護報酬債権も資金化することが可能であり、キャッシュフローに余裕を持たせるには有効な方法です。
ファクタリングを行っている会社は数多くあるので、手数料や入金までにかかる日数などを比較したうえで、利用するところを選ぶとよいでしょう。
ただし、あくまでも売掛債権を資金化する方法なので、創業したばかりで売掛債権がないような場合は利用できません。
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