ファクタリングの概要
ファクタリングとは、事業者がファクタリング会社に対して、売掛債権を売却(譲渡)することで、資金が調達できるサービスを示します。
企業間での取引では、先に商品やサービスを提供して、あとからまとめて代金を受け取る「掛け払い」を用いるケースが多いです。
掛け払いは、請求業務を簡略化できますが、都度払いに比べて代金を受け取るタイミングが遅れるデメリットがあります。
掛け払いの代金が支払われるまでには数か月の期間を要するケースが多く、事業者はこの期間、売上代金に頼らず事業運営をしなければなりません。
このような場合でも、ファクタリングを利用すれば、本来の支払日を待たずとも、現金を得ることができるのです。
なお、ファクタリング会社によっては、売掛債権だけでなく、介護報酬債権や診察報酬債権の買取を行っている場合もあります。
以降は、介護報酬債権の買取に特化した「介護報酬ファクタリング」について、詳しく記述します。
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介護報酬ファクタリングとは
介護報酬ファクタリングは、ファクタリング会社が、介護事業者から「介護報酬債権」を専門的に買い取る、ファクタリングサービスの一種です。
介護事業者が顧客に対してサービスを提供した場合、介護報酬の1~3割を顧客から受け取り、残りの代金を国民健康保険団体連合会(以下、国保連)から受領する仕組みになっています。
国保連から介護報酬を受け取るには申請から約2か月の期間を要します。
その点、介護報酬ファクタリングを利用すれば、国保連からの入金を待たずに1週間程度で現金を受け取ることが可能です。
なお、介護報酬ファクタリングは、保険適用の介護サービスを提供している介護事業者であれば利用できます。
介護報酬ファクタリングの仕組み
介護報酬ファクタリングのやり取りは、介護事業者と国保連、ファクタリング会社の3者間で行われます。
一般的なファクタリングでいうところの「3者間ファクタリング」と同様の仕組みです。
まず、介護事業者は、国保連に介護報酬の支払いを請求します。
その後、介護事業者は、ファクタリング会社に介護報酬債権の買取を依頼し、契約が成立すれば現金を受け取れます。
ただし、ファクタリング会社からは、ファクタリングサービスの利用手数料が天引きされた金額を受け取るため、介護報酬の満額を受け取れない点は事前に認識しておいてください。
ファクタリング契約を結んだあと、介護事業者とファクタリング会社の連名で国保連に対して、介護事業者の介護報酬債権が売却された旨の通知を送ります。
本来の介護報酬の支払日に、国保連からファクタリング会社に直接、介護報酬が支払われることで契約が終了します。
なお、介護報酬ファクタリングサービスによっては、介護報酬債権の買取額を2回に分けて入金する場合があるため注意が必要です。
これはファクタリング会社が未回収リスクを軽減するために採用している仕組みです。
買取時に介護報酬債権額の80%が入金され、国保連から介護報酬を受け取ったあとに残りの20%からファクタリング手数料を控除した額が支払われます。
介護報酬ファクタリングの利用の流れ
介護報酬ファクタリングサービスを利用する際の流れは以下の通りです。
【介護報酬ファクタリングを利用する際の流れ】
- 国保連に介護報酬を請求する
- ファクタリング会社と契約を結ぶ
- ファクタリング会社に介護報酬債権を売却する
- ファクタリング会社から売却額のうち80%を受け取る
- ファクタリング会社から国保連に介護報酬債権が売却された旨の通知が入る
- 国保連からファクタリング会社に介護報酬が入金される
- ファクタリング会社から売却額の残り20%より手数料を控除した額を受け取る
契約時の審査や入金されるまでの期間、利用手数料はファクタリング会社によって異なるため、申請する前に調査をして、ご自身に合ったファクタリングサービスを探しましょう。
介護報酬ファクタリングのメリット
介護報酬ファクタリングのメリットは、以下の6点が挙げられます。
メリット①すぐに資金調達できる
介護報酬ファクタリングは、すぐに資金調達できる点が強みです。
介護報酬が国保連から支払われるまでには、請求してから約2か月かかりますが、介護報酬ファクタリングを利用すれば、1週間程度で資金調達が可能です。
介護事業の運営には、家賃や人件費など、日々さまざまな支払いが発生します。
自己資金が乏しい場合や、急な支出が発生した場合など、支払いに困窮するケースもあるでしょう。
そのような早急に資金を調達しなければならないタイミングで、介護報酬ファクタリングが資金調達の有効な手段になるのは間違いありません。
また、銀行など金融機関の融資を利用したとしても、入金までに通常1~2か月ほどかかるため、やはりファクタリングを用いた資金調達は、即金性に優れているといえます。
とはいえ、ファクタリング会社によって、申請してから現金化されるまでにかかる日数は異なるため、事前の問い合わせが必要です。
メリット②負債の計上を避けられる
介護報酬ファクタリングは、介護報酬債権を売却し、資金を調達するサービスなので、負債として計上されません。
介護報酬ファクタリングで行うのは、あくまで資産の売却であり、金融機関からの融資とはそもそもの性質が異なるからです。
決算書の負債額が多いと、金融機関から融資を受けにくくなるだけでなく、取引先から不信感を抱かれる要因になるため、できるだけ避けたいものです。
介護報酬ファクタリングを利用して資金を得た場合、負債は増えず、介護事業者の信用力に傷がつくことがないため、将来、融資を受ける場合でも悪影響を及ぼしません。
メリット③良い条件の契約ができる
介護報酬ファクタリングは、一般的なファクタリングに比べて、良い条件での契約がしやすい点が特徴です。
具体的には、審査が通りやすいうえに、手数料が安いです。
介護報酬ファクタリングに限らず、ファクタリングの契約を結ぶ際には「売掛先の信用力」が重要視されます。
売掛先の信用力が高いほど、ファクタリング会社が負う貸倒リスクが低減すると判断でき、代金を回収できる可能性が高まるからです。
その点、介護報酬債権の売掛先である国保連は、国民健康保険に関する事業を担う公法人であり、倒産する可能性がほぼないといえるでしょう。
一般的な企業より信用力が高く、確実に代金を回収できるため、介護報酬ファクタリングはその他のファクタリングより、良い条件で契約できるケースが多いのです。
メリット④売掛先への通知を気にする必要がない
一般的な3者間ファクタリングの場合、売掛先の企業に対し、売掛債権を売却した旨を通知しなければならず、その際に売掛先から悪印象を持たれるケースもあり得ます。
ファクタリングの利用が売掛先に知られれば「事業者の経営状況が悪いのでは?」と疑われ、取引停止や取引量削減などの対応も取られかねないでしょう。
その点、介護報酬ファクタリングは、売掛先が国保連なので、ファクタリングを利用しても事業者が悪印象を持たれることはありません。
売掛先の心証を気にする必要がないのは、介護報酬ファクタリングの強みです。
メリット⑤新規開業の介護事業者も利用できる
介護報酬ファクタリングは、創業したばかりの新規事業者でも利用できます。
創業時には多額の費用がかかりますし、思わぬ出費がかさむものです。
国の補助金や助成金を申請していたとしても、交付されるまでに時間がかかるケースが多く、追加融資を検討する介護事業者もいらっしゃるでしょう。
介護報酬ファクタリングは、開業後の不安定な期間を乗り越える際の心強い味方となるサービスです。
メリット⑥資金の使用用途が制限されない
介護報酬ファクタリングで得た現金は、補助金や一部の融資と異なり、使用用途を限定される心配はありません。
人員補充や設備投資など、経営状況に合わせて柔軟に活用できますし、介護事業にかかわらず、ほかの事業などに充てることも可能です。
自由度の高い資金を確保したい場合には、介護報酬ファクタリングの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
介護報酬ファクタリングのデメリット
上記のように、介護報酬ファクタリングにはさまざまなメリットがあるものの、利用時にはデメリットがある点も認知しておきたいところです。
そこで、ここからは、介護報酬ファクタリングのデメリットを紹介します。
デメリット①利用が常態化してしまうリスクがある
通常の入金サイクルより早く現金が得られる介護報酬ファクタリングですが、結局は介護報酬を前倒しで受け取っているに過ぎません。
そのため、ファクタリングの利用が常態化してしまえば、それに頼りきった経営に陥り、抜け出せなくなるおそれがあります。
介護報酬ファクタリングを利用する際は、ファクタリングを用いた運営が常態化しないよう、あらかじめ出口戦略を構想しておくとよいでしょう。
デメリット②本来の報酬額よりも受け取れる額が少なくなる
ファクタリングサービスを利用する際には、手数料が発生します。
介護報酬ファクタリングは、その他のファクタリングサービスに比べて手数料は安い傾向にありますが、それでも受け取れる金額の目減りは免れません。
介護報酬ファクタリングを利用しつづければ、それだけ収入の総額が少なくなり、経営難に陥る要因になるため、利用期間や規模を決めるなどして、計画的に活用する必要があります。
デメリット③悪質なファクタリング業者がいる
介護報酬ファクタリングを利用する際には、悪質な業者でないかを見極めなければなりません。
なかには、ファクタリング会社を装い、悪質な金銭の貸付けを行うといった詐欺行為をはたらく悪徳業者もいるようです。
契約書にサインする前に、手数料や契約内容などをよく確認してください。
手数料が相場から大きく外れるような高額である場合は、要注意です。
契約内容に不安を感じたら、慌てずにほかのファクタリング会社をあたるか、金融庁の相談窓口に連絡することをおすすめします。
関連記事:健全なファクタリング取引を行うために|詐欺の事例も紹介
デメリット④利用を断られる場合がある
一般的なファクタリングに比べて、介護報酬ファクタリングは審査が通りやすい傾向にありますが、税金を滞納している場合は、利用できないおそれがあります。
長期間、税金の支払いを滞納している介護事業者は、介護報酬債権を差し押さえられるリスクが高く、ファクタリング会社が介護報酬を回収できない可能性があるためです。
介護報酬が回収できなければ、ファクタリング会社が損失を被るため、税金を滞納している事業者は審査が通りにくくなる点を留意しておきましょう。
デメリット⑤調達できる資金額に上限がある
介護報酬ファクタリングは、介護報酬債権を売却する仕組み上、債権額以上の金額を調達できません。
融資を受ける場合は、事業規模に応じた資金を得られますが、介護報酬ファクタリングで受け取れるのは、介護報酬債権額から手数料を差し引いた金額が上限です。
事業の拡大など、大きな金額の調達が必要な場合、介護報酬ファクタリングだけでなく、融資の利用を検討する必要があるかもしれません。
介護報酬ファクタリングの手数料
介護報酬ファクタリングの手数料は、ファクタリング会社や介護事業者の条件に応じて変動しますが1%程度が相場といわれています。
一般的な3者間ファクタリングの手数料の相場が2~9%であることから、介護報酬ファクタリングにかかる手数料は安いことがわかります。
ただし、上記の手数料のほかに、事務手数料や途中解約による解約金を請求されるケースもあるので、契約書に目を通し、追加費用が発生しないことを確認しましょう。
関連記事:ファクタリングの手数料と支払いサイトの関係
介護報酬ファクタリングの利用が適している事業者の特徴
利用するうえで、メリットとデメリットのある介護報酬ファクタリングですが、以下のような事業者に向いているサービスといえます。
【介護報酬ファクタリングの利用が適している事業者】
- 確実に資金調達をしたい事業者
- 短期間で資金調達したい事業者
- 融資を受けたくない事業者
近年、少子高齢化の影響により介護事業の需要が増えつつあるため、新たに介護施設の開設や増設を検討する事業者も少なくないでしょう。
しかし、資金の調達に銀行融資を受けたいものの、時間がないため、審査を受ける余裕がない方もいらっしゃるかもしれません。
介護報酬ファクタリングなら、即金性が高く、銀行融資に比べて審査が容易なため、資金調達の手段として適しています。
また、スタッフの増員や設備の故障など、突発的な支出が発生した場合も、数日から数週間で現金が得られる介護報酬ファクタリングは有効な手立てです。
ほかにも、介護報酬ファクタリングは負債として計上されない性質上、決算書の内容に気を配りたい事業者は、利用を検討してよいかもしれませんね。
介護報酬ファクタリングは介護報酬債権を専門で買い取るサービス
いかがでしたでしょうか?
介護報酬ファクタリングは、介護事業者がすぐに資金調達したい際に利用できるファクタリングサービスの一種です。
介護事業者の収入の大半は国保連から支払われる介護報酬であるにもかかわらず、現金化までに2か月程度の期間を要します。
その点、介護ファクタリングを利用すれば、約1週間で資金を得ることが可能です。
ただし、利用時には手数料がかかるうえに、常態化しやすいので、計画的に活用しなければなりません。
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資金繰りにお困りの事業者様は、ぜひご覧ください。
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この記事の執筆者:資金調達ニュース編集部
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