ここでは下記3つについて徹底解説をしていきます。
- 起業時の代表的な資金調達方法
- それぞれの方法におけるメリット・デメリット
- どの方法を選ぶべきかの判断基準
ぜひ、最後までご覧ください。
融資で資金を調達するのは難しい?
融資の可否は、金融機関による厳格な審査によって決まります。
金融機関が求める一定の基準を超えることができれば融資を受けられますが、以下で紹介するケースに該当している場合、融資を受けるのが難しくなる可能性があります。
【融資を受けられるケース】
経営が落ち込んでいる
売上が上がらず経営状況が悪化している場合、融資の審査に通らないおそれがあります。
金融機関は融資の審査において、財務状況や事業内容、返済能力などを確認します。経営状況が悪く、借主からの安定的な返済が見込めない場合、金融機関は貸倒れリスクを避けるために融資を行いません。
そのため経営状況が芳しくない事業者は、売上が回復基調ではない限り、一般的に融資を受けるのが難しいといわれています。
担保となる資産がない
利用者に担保として提供できる資産がなく、資金を確実に回収できる保証がない場合、金融機関は融資の可否を厳しく判断するでしょう。
融資の審査における返済能力の評価対象には、事業者の収支状況だけではなく、不動産や株式といった資産も含まれます。
金融機関は、事業者からの返済が見込めない場合、担保として提供された資産によって融資した資金を回収します。
そのため、返済能力に不安があり、十分な資産を担保として提供できない場合、融資を受けるのは容易ではありません。
過去の履歴に問題がある
事業者の与信情報に問題がある場合、融資を断られることがあります。
金融機関は、事業者の経営状況のみならず、現在の借り入れ状況や過去の返済履歴といった情報も確認したうえで、総合的に返済に対する信頼性を判断します。
そのため、現状の借入金額が多額である場合や、過去の返済に遅れが生じていた場合は返済能力に問題があると見なされ、融資を断られてしまう可能性が高くなります。
税金を滞納している
税金を滞納している事業者は、返済能力に問題があると判断され、融資を受けられない可能性があります。税金の滞納は、事業者の資金不足を意味します。
金融機関は、納税情報も確認したうえで事業者の返済能力の有無を見極めるため、税金を滞納している事業者への融資は難しいと判断するでしょう。
関連記事:税金滞納していると日本政策金融公庫から融資は受けられない?
融資以外に資金を調達する方法
起業に必要な資金を用意するための方法はいろいろとあるので、それぞれの方法のメリットやデメリットを知ったうえで、選択しなければなりません。
以下では、起業時の主な資金調達の方法の特徴やメリット・デメリットなどについて、説明します。
【資金調達の方法の特徴】
ファクタリングの利用
ファクタリングとは、自社が保有する売掛金をファクタリング会社に売却し、手数料が差し引かれた額を、売掛金の入金期日前に現金化できるサービスです。
事業者間の取引では、商材を提供したのち、代金が入金されるまでに数か月程度かかる掛取引が行われていることもが珍しくありません。
そのため、入金期日までの資金繰りをきちんと行わなければ、売掛金を回収する前に手元の資金が不足し、最悪の場合黒字倒産に陥る可能性があります。
このような場合にファクタリングを利用すれば、売掛金の入金期日を待たずに資金を調達でき、資金ショートを回避できます。
さらにファクタリング会社によっては、最短即日で売掛金の現金化が可能です。
また、ファクタリング会社は審査の際に利用者ではなく、売掛先の信用力を重視する傾向にあります。そのため、自社が赤字経営の場合や税金を滞納している場合であっても利用できる点も魅力の一つです。
なおファクタリングには、2者間ファクタリングと3者間ファクタリングの2つの契約形態があります。

2者間ファクタリングは、利用者とファクタリング会社のみで契約を結ぶため、手続きがスピーディーに進みます。
一方、3者間ファクタリングは、売掛先にファクタリングを利用する旨を通知したうえで承諾を得る必要があります。
この場合、ファクタリング会社が売掛金の存在を売掛先に直接確認できることから、未回収のリスクが低く、2者間ファクタリングと比べて手数料を抑えられるというメリットがあります。
資金調達にファクタリングを検討する事業者は、それぞれの特徴をあらかじめ把握しておきましょう。

銀行からの融資
銀行からの融資で起業時の資金調達を行うのは、もっともオーソドックスな方法のひとつです。
銀行自体とても数が多いですし、起業時の資金として利用できる融資商品をいくつか取り扱っている銀行もあるので、非常に幅広い選択肢の中から利用する商品を選ぶことができます。融資で資金調達を行うと、その後利子を上乗せして返済しなければなりませんが、銀行の適用金利は比較的低めなので、返済時の負担も大きくなりにくいです。
ただ、審査に通過できなければ資金調達を行うことはできませんし、申し込んでから実際に資金を調達できるまでに1ヵ月~程度の時間を要することは、念頭に置いておきましょう。
関連記事:銀行の融資の仕組みと注意点
日本政策金融公庫からの融資
日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、銀行同様に起業や事業拡大のために資金が必要な企業や個人事業主に対して、融資を行っています。銀行よりも低金利で融資を受けられるのが大きな特徴なので、返済負担をできるだけ抑えたい場合は日本政策金融公庫から融資を受けるのがおすすめです。
また、日本政策金融公庫は、比較的規模の小さな企業や個人事業主を支援するための金融機関として設立されました。そのため、起業を目指す場合は銀行よりも融資を受けやすいというのも、非常に大きなメリットです。
ただ、審査は銀行以上に時間がかかりますし、審査時に提出しなければならない書類が非常に多いことがネックになる可能性があります。
エンジェル投資家からの出資
エンジェル投資家は、将来的に成長の見込みがある企業や個人事業主などに出資を行っている個人投資家です。自身も以前事業を経営していたという人も多いので、資金の出資を受けると同時に、経営に関して有益なアドバイスをもらえる可能性もあります。
ただ、場合によっては事業に過度に干渉してきて、当初思い描いていたような事業運営を行うための妨げになる可能性もある点は、デメリットとして考慮しておかなければなりません。
ベンチャーキャピタルからの出資
ベンチャーキャピタルもエンジェル投資家同様に、将来伸びそうな見込みのある企業や個人事業主などに出資を行っています。
ただ、ベンチャーキャピタルは事業として出資を行っているので、出資をしてもらえるかどうかの判断はエンジェル投資家よりもシビアなことが多いです。もし出資OKの判断をもらえれば、数千万円や数億円単位での出資を受けられる可能性もあるので、まとまった資金を必要としている場合には非常に頼りになるでしょう。
エンジェル投資家と同じく、経営に口を出される可能性があることは、念頭に置いておく必要があります。
関連記事:ベンチャーキャピタルとは?仕組みやメリット・デメリットを解説
補助金や助成金の利用
国や地方自治体などが設けている補助金や助成金も、起業のための資金として活用することができます。
補助金や助成金は返済が不要というのが非常に大きなメリットで、融資などのように返済が経営を圧迫するような心配はありません。特定の事業内容や特定の規模の事業者でなければ利用できないような制度もあるので、自社が利用できる制度かどうかを見極めたうえで、利用を検討するようにしましょう。
関連記事:起業時に活用したい補助金・助成金を紹介
クラウドファンディングの活用
クラウドファンディングは、まだ世に出していない商品やサービスなどのアイデアをネット上に公開し、賛同したり共感したりしてくれる人から出資を募る方法です。調達した資金は返済する必要がありませんし、金融機関などの融資と比べると早めに資金を調達できることが多いのがメリットと言えます。
ただ、アイデアをネットに公開するため盗用されてしまう危険性があることや、想定しているほどの金額が集まらないケースもあることは、デメリットと考えられるでしょう。
関連記事:クラウドファンディングの種類は多い【利用者目線で選ぶポイントとは】
ビジネスコンテストへの応募
ビジネスコンテストは、ビジネスモデルやビジネスプランに関するアイデアのコンペティションです。優秀賞をもらえるような上位に選ばれると、実際にそのプランでビジネス展開を行うための支援として賞金をもらえる場合があります。
また、「○○ビジネスコンテストで賞を獲得した」ということはブランディング的な意味も持ちますし、思い描いているプランがどのような評価を受けるか、腕試し的な意味で参加してもよいでしょう。
ただ、ビジネスコンテストでは「夢物語」のような壮大なテーマを掲げたプランやアイデアのほうが、評価される傾向にあります。堅実に事業展開が望めそうなものの、一見すると地味な内容のアイデアはビジネスコンテスト向きではないので、ほかの方法での資金調達を検討したほうがよいでしょう。
関連記事:スタートアップ企業にファクタリングが適している根拠を解説
親族などからの借り入れ
金融機関からの融資で資金調達を行う場合は、書類を提出して審査に通過する必要があるため、かなりハードルが高い場合も多いです。
その点、親族や知り合いといった個人的なつながりを利用して借り入れを行う場合は、そういったかしこまった手続きは特に必要なく、誰でも資金を調達できる可能性を秘めています。取り決め次第では、金融機関からの融資のように毎月決まったタイミングで返済を行う代わりに、事業がうまく回りだしてからの返済にしてもらうことも可能でしょう。
ただ、お金の問題は人間関係を容易に破壊してしまうだけの力を持っているものです。返済に関係したトラブルを起こしてしまうと、これまで通りの関係性には戻れなくなってしまう可能性が高いことは、肝に銘じておくべきでしょう。
関連記事:企業の資金確保のために知っておきたい資金調達方法
リースバックの活用
リースバックは、所有している不動産や設備などをリースバック会社に売却した後、賃貸借契約を結ぶ資金調達方法です。
このとき売却した不動産や設備は、借主として継続的に使用できます。そのため、例えば事務所として使用している不動産をリースバックで売却した場合も、調達した資金を事業に充てつつ、これまで通りの運営が可能となるわけです。
また、一時的な資金不足を目的にリースバックを活用した場合も、事業の安定化を図ったのちに売却した資産を買い戻せることがあります。
資金を調達する方法の選び方
資金調達の方法は融資以外にも様々な方法が存在するため、それぞれの特徴を把握したうえで、自社に合った資金調達方法を選ぶことが大切です。
このときに行う自社の現状分析は、適切な資金調達の方法を探る手掛かりとなります。
ここからは、融資以外の資金調達方法について、状況別のパターンに分けてご紹介します。
【状況別パターン】
経営状態が良くない場合
経営状態の改善を目的に資金調達を行う場合には、以下の方法が適しています。
【経営状態が良くない場合に適した資金調達の方法】
経営状況が悪化していても、自社で売掛金を保有しているのであれば、ファクタリングによって資金を確保できます。
また、事業の安定化を図るためには、補助金・助成金を利用する、あるいは自社が不動産を所有しているのであればリースバックを活用して資金を調達するのも有効です。
事業を成長させたい場合
事業活動が好調で、さらなる成長を目的とする資金調達には、以下の方法が適しています。
【事業を成長させたい場合に適した資金調達の方法】
- エンジェル投資家からの出資
- ベンチャーキャピタルからの出資
- 補助金・助成金
- リースバック
事業の成長を図る際は、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルに向けて事業内容や戦略をアピールして、出資を募るという選択肢があります。
今後の成長に見込みがあると判断されれば、原則返済義務のない資金の調達が可能です。
また、事業者向けの補助金・助成金を利用すれば、事業拡大に伴う資金繰りの一助となるでしょう。
リースバックの活用も、まとまった資金が手元に入るため、事業の成長に向けた資金調達に適しているといえます。
リスクを抑えたい場合
リスクを抑えて資金を調達したい場合に適している方法は、以下の通りです。
【リスクを抑えたい場合に適した資金調達の方法】
売掛金を保有する事業者がファクタリングを利用すれば、手数料は引かれるものの、確実な資金調達が可能となるほか、売掛金が未回収になるリスクを回避できます。
また、補助金・助成金制度を活用すれば、一般的に返済義務を負うことなく資金の調達が可能です。さらにこうした補助金・助成金制度のなかには、中小企業向けのものも存在します。
中小企業の支援を目的とする各自治体や中小企業振興公社が行う支援活動の一つで、用途はあらかじめ決められているものの、事業の安定化や成長を図るための資金を得られます。
起業したい場合
起業する際の資金調達には、融資を除き以下の方法が有効です。
【起業したい場合に適した資金調達の方法】
- エンジェル投資家からの出資
- ベンチャーキャピタルからの出資
- クラウドファンディング
- ビジネスコンテスト
- 補助金・助成金
開業資金および利益が生まれるまでの運転資金には、数百万円~数千万円の高額な資金が必要になるため、自己資本のみで賄うのは困難です。
特に起業時は、金融機関へ融資を申し出ても、審査の判断材料となる事業者の実績がなく、融資を受けられないケースがあります。
そのため、起業に必要な資金を調達する際は、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資、クラウドファンディングや補助金・助成金制度の活用がおすすめです。
融資以外の資金調達を成功させるためにできること
融資以外の資金調達を成功させるために、押さえておきたい3つのポイントがあります。
以下で、詳しく見ていきましょう。
ポイント①目的に合う方法を選ぶ
融資以外の方法で資金調達を成功させるには、自社の目的に合った方法を選ぶことが重要です。
資金調達の方法によって、課される条件や抱えるリスクは異なるため、自社に合った方法を選ばなければ、将来的な負担が想定よりも大きくなってしまうおそれがあります
たとえば、事業の拡大に伴って設備投資が必要となり、資金調達を急いでいる場合、補助金・助成金制度を活用しても、支給されるまでにはある程度の時間がかかります。
速やかに資金を調達したい場合は、最短即日での入金が可能なファクタリングを利用するのが有効です。
このように、自社の資金調達の目的を明確にしたうえで、最適な方法を選択しましょう。
ポイント②資金調達にかかるコストを把握する
資金調達に融資以外の方法を用いる際は、資金を得られるまでのコストの把握が不可欠です。
たとえばファクタリングは、入金期日前に売掛金を現金化できる一方で、手数料が引かれるため、売掛金の満額が手元に入るわけではありません。
またリースバックは、賃料を払い続けなければ所有する不動産をこれまで通り使用できないことから、長期的な目線ではコストがかかります。
資金の調達方法によっては別途費用がかかるので、利用時はそれぞれの仕組みをきちんと把握し、適切に判断する必要があります。
ポイント③必要額を明確化する
資金調達を進める際は、必要額を明確にしておくことが重要です。特に、エンジェル投資家やベンチャーキャピタルから出資を募る場合は、求める資金額が大きすぎると出資を断られる可能性があります。
必要な金額や用途が明確化されていない場合、出資者からの事業活動に対する信用を損ない、厳しい判断を下されてしまうのです。
たとえ資金を調達できたとしても、目的が定まっていない状態では、自社で適切に運用できないといった状況にも陥りかねません。融資以外で資金調達を行う際は、目的をきちんと定めたうえで、必要な金額を把握することから始めましょう。
融資以外の資金調達は、自社に合う方法を選ぶことが重要
今回は、融資以外で資金を調達する方法を、選ぶ際のポイントとともに紹介しました。
資金調達の方法には融資のほかにも、売掛金を売却して入金期日前に現金化できるファクタリングや、不動産を売却後に賃貸借契約を結ぶリースバックなどがあります。
自社に合った資金調達の方法を選ぶためには、自社の状況をきちんと分析することが重要です。
また、資金調達の目的や必要額を明確化すれば、資金調達の成功率を高められます。
資金調達の方法をより詳しく知りたい事業者様は、ぜひ資金調達ニュース.comの記事をご覧ください。当サイトでは、ファクタリングをはじめとする様々な資金調達の方法を紹介しております。
参考:法人設立にかかる費用はどれくらい?会社を揺るがす反社リスクにも備える! | RoboRoboコラム
OA機器販売会社にて財務・経理・人事などの要職を歴任し、豊富な実務経験を有する。
2021年には、日本中小企業金融サポート機構の代表理事に就任し中小企業の金融に関わる専門家として、中小企業の経営者や個人事業主が抱える資金面・経営面の課題解決に尽力。
「日本の中小企業の経営者・個人事業主の皆様が抱える資金面や経営面の課題を解決し、日本を元気で豊かにしたい」という信念のもと、さまざまな金融に関する悩みに対し、適切なサポートを提供している。