ビジネスローンとは
ビジネスローンとは、事業者が事業資金を用意するために借り入れすることができる金融商品のことです。
ビジネスローンは開業資金や運転資金、設備投資など、様々な用途に用いられます。
最大の特徴は、利用にあたって原則担保や保証人が不要な点です。
そのため、資金繰りに悩む事業者にとっては、ビジネスローンを利用するメリットが大きく、一般的な銀行融資と比べて利用するハードルが低い資金調達方法となっています。
一方、金利はやや高めに設定されていることが多いため、事前に綿密な返済計画を立てたうえで利用してください。
ビジネスローンと融資の違い
“事業資金の確保に用いられる金融商品”と聞くと、銀行による融資を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
ビジネスローンは事業資金専用のローン商品を指し、広義では融資に該当します。
ただし実際の利用シーンでは、ビジネスローンと融資は、異なる資金調達手段として扱われるのが一般的です。
主にノンバンクが提供しているビジネスローンは、審査が迅速で最短即日での入金がかなう場合もあります。
対して銀行の融資は、金利が低い点が大きな魅力ですが、審査に時間がかかり、基本的には審査に1週間以上、入金までには1か月以上を要します。
【ビジネスローンと銀行融資の比較】
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ビジネスローン
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銀行融資
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融資元
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消費者金融や信販会社など
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銀行
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審査にかかる時間
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最短即日
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1週間程度
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審査の難易度
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比較的緩い
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比較的厳しい
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担保や保証人の有無
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不要
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あると有利
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このように多くの点でビジネスローンと銀行融資は異なります。
資金調達を考える事業者は、それぞれの特徴を理解し、状況に応じて適切な手段を選ぶことが重要です。
決算書の提出が必要な理由
決算書は企業にとっての「成績表」のようなもので、決算書をチェックすることでさまざまなことが分かります。
ビジネスローンを利用する際に決算書の提出が必要な理由について、以下で説明します。
事業の実態を確認するため
決算書には、直近1年間の事業の成果や売上・利益などの数字がまとめられています。
そのため、決算書を確認することで、その企業の事業実態をある程度把握することができます。
事業実態に問題がなく売上や利益なども堅調な企業であれば、融資対象として問題なしと判断されます。
逆に事業実態に気になる点があると、融資対象として不適格とみなされてしまう可能性があります。
返済能力・借入状況を確認するため
事業実態は、その企業の返済能力とも関係があります。
事業が好調で利益が出ているようであれば、ビジネスローンによる融資を行ったとしても、問題なく返済を行うことができるでしょう。
ただ、事業が好調であったとしても、事業を推進するためにすでにほかの金融機関から多額の融資を受けていたとなると、話は少々変わってきます。
その場合は事業で得た利益が、すでに融資を受けている金融機関への返済に充てられてしまう可能性が高いからです。
借入状況を踏まえて返済能力を判断するためにも、決算書の提出は欠かせません。
粉飾決算を見抜くため
決算書が企業の成績書である以上、少しでも企業としての成績をよく見せようと、決算を粉飾してしまう企業も存在します。
万が一金融機関が粉飾された決算をもとにして、当該企業が優秀であると判断して融資を行ってしまえば、貸し倒れにあってしまう場合も考えられます。
粉飾決算を行う場合は、売上や利益といった数字を巧妙に細工することになりますが、どれだけうまく細工を行ったとしても、どこかに綻びが生じるのが普通です。
一期分の決算書だけではその綻びを見抜くのは難しいですが、複数年の決算書を比較して確認することで、粉飾決算を見抜きやすくなります。
そのためビジネスローンの申し込みでは、2期以上の決算書の提出が求められるのが一般的です。
赤字だとビジネスローンは利用不可?
決算書を提出したくない理由としてよく挙げられるのは、「赤字が判明してしまうと融資を受けられないだろうから」ということです。
確かに決算は赤字よりも黒字のほうが、金融機関の印象がよいことは間違いありません。
ただし、理由によっては、赤字であってもビジネスローンを利用できるケースはあります。
事業拡大のために設備を導入したり新しく部署を創設したりといった前向きな理由で出費がかさみ、赤字になっている場合などです。
本業の事業が好調で赤字も一過性のものであると判断されれば、赤字決算の企業でもビジネスローンを利用できる可能性が高いです。
したがって、「決算書不要」という条件にこだわりすぎて、必要以上に選択肢をせばめる必要はありません。
(赤字が2期以上連続していると、会社の事業構造そのものに何かしらの欠陥があると考えられる可能性が高いため、審査落ちになってしまうでしょう。)
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赤字決算時に使用できる融資
事業者が赤字決算を出した際も、事業を立て直すための資金を補う目的で融資が行われることがあります。
融資元は「事業が回復すれば返済が可能になる」という期待から融資を行っているのです。
しかし、赤字決算時に融資を受けられるかどうかは、当然ですが融資を提供する側の判断に委ねられています。
「この企業は回復の見込みがある」と判断されれば融資が受けられる可能性がありますが、回復が見込まれない場合には、断られることも少なくありません。
赤字決算時の融資は融資元にとってはリスクが伴うため、すべての赤字企業が対象となるわけではない点は留意しておきましょう。
赤字の法人がビジネスローンを利用する方法
赤字決算の法人がビジネスローンを利用するには、周到な準備が必要です。
複数の資料によって、赤字を乗り越え、将来的に黒字化できる旨を融資元に証明しないと、審査に通るのは難しいでしょう。
ここでは、赤字の法人がビジネスローンを利用するために有効な、4つのポイントを詳しく解説します。
①具体的な経営改善計画書を提出する
今後の経営について、具体的な内容が書かれている経営改善計画書があれば、融資元に対して事業の将来性を示すのに効果的です。
経営改善計画書には、現在赤字決算となっている原因の分析や詳細な改善策、そして将来的な収益予測を記載する必要があります。
「なぜ赤字になったのか」を明確にし、どのようにしてそれを解決するかを具体的に説明することで、融資元が企業の再建可能性を評価しやすくなるためです。
曖昧な内容ではなく、実現可能で持続的な施策を提示することがポイントです。
②返済能力を示す証拠を提出する
まとまった預金や不動産があるならば、それに関する書類を“返済能力を示す証拠”として提出するのも一つの手です。
融資元は、企業が借り入れたお金を返済できるかどうかを慎重に判断します。
その判断に、根拠となる具体的な資料が必須というわけです。
不動産の登記簿謄本などを用意し、担保となる資産の証拠を示すことで、融資元に対する信頼を高められます。
また、過去の売上実績や返済履歴、将来的な売上予測も示すことで、融資元の心証が良くなり、融資を検討してもらえる可能性が高くなることが期待できます。
③資金繰り表を提出する
資金繰り表は、企業のキャッシュフローを示す重要な資料です。
これを見ることで、融資元は企業がどのように資金を運用しているか、そして将来的にどの程度の資金需要があるのかを把握できます。
融資元に提出する資金繰り表は、以下の点を踏まえて作成しましょう。
【資金繰り表を作成する際のチェック項目】
- 費用の計上漏れがないか
- 試算表や貸借対照表の数字と一致しているか
- 収支の予測は確かな根拠に基づいているか
説得力のある資金繰り表を提示できれば、自社の資金計画が適切であり、赤字状態から脱却するための計画が実現可能であることを証明できます。
④他社からの借り入れを減らしておく
各種資料の提出と同時に、他社からの借り入れを減らしておくことも大切です。
他社からの借り入れが多い状態は、ビジネスローンに限らず、新たな融資の審査において不利にはたらきます。
融資元は企業の債務状況を厳しくチェックしており、既存の借入残高が多いと返済能力に難ありとみなされてしまいます。
そのため、審査に通りやすくなるには、可能な限り他社からの借り入れを減らし、財務状態を改善しておくことが大切です。
決算書不要で利用可なビジネスローン
決算書不要で利用できるビジネスローンを、以下で紹介します。
決算書不要と言えども、他に満たすべき条件がありますので、しっかりチェックしましょう。
オリックスVIPローンカードBUSINESS
オリックスVIPローンカードBUSINESSの商品詳細は、以下の通りです。
融資対象者 |
個人事業主
法人格を有する事業の代表者 |
融資限度額 |
50万円~500万円 |
金利 |
6.0%~17.8%
(100万円コース以上は14.9%以下) |
必要書類 |
本人確認書類
収入証明書類 |
担保・保証人 |
不要 |
オリックスVIPローンカードBUSINESSは、法人ではなく法人代表者に融資を行うというのが最大の特徴です。
会社ではなく個人に融資する形となるので、決算書を提出する必要がないというわけです。
また、事業資金としても利用できるカードローンなので、資金使途が事業資金のみに限られているわけではないということも、ほかのローンとの違いと言えます。
公式サイト:VIPローンカードBUSINESS(ビジネスローン) │オリックスクレジット
りそなビジネスローン「活動力」
りそなビジネスローン「活動力」の商品詳細は、以下の通りです。
融資対象者 |
個人事業主
法人 |
融資限度額 |
10万円~500万円 |
金利 |
6.0%、10.0%、14.0%のいずれか |
必要書類 |
本人確認書類(原則顔写真付き)
収入証明書類(個人事業主で申込金額が300万円超の場合)
履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)(法人の場合)
直近2期分の決算書 |
担保・保証人 |
担保:不要
保証人:法人の場合は原則として法人代表者
(個人事業主は不要) |
りそなビジネスローン「活動力」は、必要書類として決算書が挙げられているように、実は原則として決算書の提出が必要です。
しかし例外があり、1回目の決算期を迎える前まであれば決算書なしで申し込むことができます。
創業して間もない場合は、決算書不要のビジネスローンの選択肢として考えられるでしょう。
公式サイト:りそなビジネスローン「活動力」|りそな銀行
アルトア「オンライン融資サービス」
アルトア「オンライン融資サービス」の商品詳細は、以下の通りです。
融資対象者 |
個人事業主
法人 |
融資限度額 |
50万円~300万円(10万円単位) |
金利 |
2.8%~14.8% |
必要書類 |
本人確認書類 |
担保・保証人 |
不要
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アルトア「オンライン融資サービス」は、本人確認書類の提出だけで利用できる非常に便利なビジネスローンです。
ただしアルトアは、会計ソフトでおなじみの弥生株式会社の子会社であり、弥生会計に入力されたデータを提出することが利用の条件となっています。
弥生会計に入力されたデータを提出することで、決算書と同等以上のデータが金融機関に渡ることになるので、決算書の提出が不要という仕組みです。
会計ソフトとして弥生会計を利用している場合は、利用を検討してもよいでしょう。
公式サイト:スモールビジネスの新しい選択肢となるオンライン融資|アルトア株式会社
アイフル「事業サポートプラン」
アイフル「事業サポートプラン」の商品詳細は、以下の通りです。
融資対象者 |
個人事業主
法人 |
融資限度額 |
100万円~1億円 |
金利 |
3.0%~12.0% |
必要書類 |
本人確認書類
収入証明書類 |
担保・保証人 |
担保:土地・建物
保証人:法人の場合は原則として法人代表者
(個人事業主は不要)
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アイフル「事業サポートプラン」には、無担保ローンと不動産担保ローンがありますが、決算書不要で利用できるのは不動産担保ローンです(上表の商品詳細も不動産担保ローンのもの)。
不動産を担保にするだけあって、最大で1億円とかなりまとまった金額の資金調達を行うことができます。
担保にできる土地や建物がある場合は、大がかりな資金調達の際に非常に頼りになるでしょう。
公式サイト:事業サポートプラン|アイフル
PayPay銀行ビジネスローン
PayPay銀行ビジネスローンの商品詳細は、以下の通りです。
融資対象者 |
個人事業主
法人 |
融資限度額 |
最大500万円 |
金利 |
2.8%~13.8% |
必要書類 |
PayPay銀行のビジネスアカウントがあれば必要なし |
担保・保証人 |
不要
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PayPay銀行ビジネスローンを利用するためには、PayPay銀行の普通預金口座「ビジネスアカウント」が必要です。
PayPay銀行での取引データを提出することで、実質的に決算書と同等以上のデータが金融機関に渡ることになるので、決算書の提出が不要という仕組みです。
ただし法人の場合は、審査の過程で決算書等の提出を依頼される可能性もあるので、その点には注意しておきましょう。
公式サイト:ビジネスローン(法人向け)| PayPay銀行
赤字の法人がビジネスローンの審査に落ちるケース
ビジネスローンの審査では、企業の財務状態や代表者の信用情報が厳しく調査されます。
繰り返しになりますが、赤字の法人は「リスクが高い」と判断されやすいため、審査に通過する難易度が高いことは認識しておく必要があります。
以下にケーススタディを紹介するので、どのようなときに審査に落ちやすいかを把握しておきましょう。
2期以上赤字が続いている
2期連続で赤字が続いている企業は、ビジネスローンの審査に通りにくくなります。
なぜなら、融資元からその企業が黒字に転換する見込みが低いと判断されるためです。
赤字が続いている状態では、近い将来の黒字化が確実としても、説得力のある経営改善計画書を提出しない限り、融資担当者を納得させるのは難しいでしょう。
そのうえ、経営改善計画書に具体的な数値や実行可能な改善策の裏づけがなければ、審査はさらに厳しいものとなります。
税金を滞納している
税金の滞納は、ビジネスローンの審査において大きなマイナス要因となります。
なぜなら、税金を滞納していると経営状態が悪化しているとみなされるだけではなく、返済能力に問題があるのではないかとの疑念を与えてしまうためです。
実際に日本政策金融公庫をはじめ、多くの金融機関では、納期限の到来している税金が完納されていることを融資の条件の一つとしています。
税金の未払いがある場合、残念ながらビジネスローンの利用は困難になるというわけです。
代表者が金融トラブルを起こしている
法人がビジネスローンを申し込むとき、代表者個人の情報も調査対象となります。
代表者が過去に金融トラブルを起こしていたら、ビジネスローンの審査に悪影響を及ぼします。
融資元は代表者の信用情報を確認して、過去に融資やローンの延滞をしていたり、自己破産をしていれば「リスクが高い」と判断するためです。
代表者の信用情報に傷があると企業自体の信用も大きく損ねるため、不安な場合は事前に信用情報機関に開示を求め、代表者の信用情報を確認しておくとよいでしょう。
ビジネスローン以外の資金調達方法
法人が資金を調達する方法は、何もビジネスローンだけではありません。
場合によっては、ビジネスローンに頼らずとも、ほかの資金調達手段を活用することで、より有利な条件で資金を確保することも可能です。
ここからはビジネスローン以外の資金調達方法をいくつか紹介します。
日本政策金融公庫による融資
日本政策金融公庫は、政府が設立した金融機関で、中小企業や新規事業者を支援するための低金利融資を提供しています。
融資制度の一つである経営環境変化対応資金(セーフティネット貸付)では、条件を満たした中小企業に対し、最大7.2億円もの貸し付けを行っています。
公庫の融資はビジネスローンに比べて金利が低く、長期にわたって安定した返済計画を立てられるため、企業にとってありがたい存在です。
ただし、審査結果が出るまでに3週間程度を要するため、急ぎの資金調達には間に合わない可能性があります。
公式サイト:日本政策金融公庫
不動産担保融資
融資で資金調達する方法としては、ほかにも不動産担保融資が挙げられます。
不動産の担保価値が高いほど、低金利で大規模な融資を受けられます。
ただし返済が滞ると、担保として提供した不動産を失うリスクがあるため、綿密な返済計画を立てる必要があります。
ファクタリング
ファクタリングは、企業が保有する売掛金を早期に現金化できるサービスです。
企業や個人事業主が保有する売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、本来の支払期日を待たずに、すぐに現金が手に入ります。
ファクタリングはあくまでも債権の譲渡契約のため、融資とは異なり、信用情報に影響を与えることはありません。
また、ファクタリング会社によっては最短即日の入金が可能なため、迅速な資金調達を希望する事業者に適しています。
関連記事:即日での入金に対応しているファクタリング会社29選
赤字の法人はビジネスローンの利用が困難!ほかの資金調達方法も検討を
本記事では、赤字状態の法人とビジネスローンの関係について解説しました。
法人が赤字だからといって、必ずしもビジネスローンを利用できないわけではありません。
経営改善計画書や返済能力を示す証拠などを提出することで、審査に通過できる可能性があります。
しかし、2期連続で赤字が続いていたり税金を滞納していたりすると、返済能力に疑問をもたれ、ビジネスローンを利用するのが難しくなります。
状況に応じて、日本政策金融公庫のローンやファクタリングといった、ほかの資金調達方法も検討しましょう。
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